第6話 ふたりの差

「キミは少食なんだな」

「…自分もそうだろ」


 こんな時に食欲わかねぇし、メロンパン一個食ってるだけマシだろ。それに比べてうめえ棒一本だけは流石に考えられん…。

 華月さんは突然俺の目の前に立ち、背比べを始め、自分の勝利に微笑んだ。


「しっかり食べないと大きくなれないぞ」

「そういうアンタは全然食べないくせにデカいよな」

「…胸のことか?」


 シャツの襟を引っ張って谷間を見せつけてくる。


「ちげぇよ!身長の話だろッ!」

「スタイルの良さには自信があるからな!」


 自分で言わなかったら良かったんだけどなぁ…。


「これだとまるで、小学生の息子と母親みたいだな」


 にんまりと腹の立つ笑みを浮かべてきやがった。


「う、うるせぇよ!」

「まぁまぁ、そう怒るなよ少ね…ん——⁉︎」


華月さんの表情が固まった。

…この感覚、覚えてるぞ……!

 ゴクリと喉を鳴らして振り向き、驚愕した。


「流石は監視者と言ったところか…。奈月くん、事務所にまわって裏から逃げるぞ」


 店の外にいるはずなのに、中まで伝わってくる冷たい殺意。見ているだけで震えが止まらなくなる。


「早く行け‼︎」


 華月さんの声で我に返り、俺は走り出した。

裏口から出て、駐車場の塀を乗り越えて進んだ。

ちくしょう!メシ食うのも許されねぇのかよ!

 振り返ると、華月さんは立ち止まっていた。


「神社に向かうんだ!」

「アンタはどうするんだよ!」

「私は…キミを守るためにここに来たんだ。いいから早く行け!」

「——待ってるからな!」


 だから、絶対にいなくならないでくれよ!

 覚悟を決めて走り出した。

うしろから聞こえてくる銃声が、俺の不安を募らせるばかりだったが、何故か身体はいつもより軽く、今まで辛かったはずの階段ですら、楽に感じられた。

——どうして、俺の大事なものばかり奪うんだよ!

父さんも、母さんも、葉月も、そして華月さんまで……!


「おい!どこかで聞いてるんだろ!返事してくれよ!どうして俺ばっかりこんな目に遭わないといけないんだよ!答えてくれよ、神様ぁぁぁっ‼︎」

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