パルクールゼロフィールド
アーカーシャチャンネル
第1話『コンビニコラボのビッグデータを回収せよ』
第1話前編1
人々は、ある事件に関して認識が誤っていた。
ブラックバッカラ事件、それは別のアニメ番組で起こった出来事であり、本来は違う事件が発生していたのだ、と言う。
どちらもAIアバターが絡んでいたために起きた認識の誤り……とされているが、それはカバーストーリーに過ぎない。
本当の意味でのブラックバッカラ事件、それを今から紐解いていこう。
「この事件は、あるVTuberの誕生にも関係していて、更に言えば……」
ガーディアン秋葉原本部、そこである情報を整理していた人物……それは秋葉原支部長。男性の方である。
秋葉原本部の支部長は対電忍だと確か……と思うかもしれないが、ブラックバッカラ事件の時系列は対電忍の前に当たる話だ。
(フェアリアル、確か彼女の名前は……)
この段階では、彼自身は気づいていない。フェアリアルが、実はガーディアンに所属していたという事実を。
そして、時間は対電忍の全てが始まる前の4月までさかのぼる。
「あのVTuberさえ……いなければ」
埼玉県内某所、部屋と言うよりは客間に置かれていたパソコンの前で何かを入力している一人の男性がいた。
パソコンのカレンダーは4月を示している。画面はいわゆる株価のグラフを表示しているのだろう。
彼が作業をしていた時間帯、それはまさかの午前6時台……。
「そうだ。これは一種の……」
株価のグラフは、いわゆるサイトで取り扱っていたもので、表示されていたブラウザを閉じた。
自分として、この株価は都合が悪い。見ていたのは、買っている株価ではない。むしろ、数日前に売り払った方の株だ。
その後、別のプログラムを立ち上げ……。
「これで、奴も終わりだ」
彼がパソコンで見ていたもの、それは何かの販売データにも見えるものだった。
ある地点において、その商品が大きく売れている事がざっくりと分かる。
(あの企業勢と共に……)
この人物は、何が目的でこのデータを奪おうとしたのか?
データの正体が発覚するのは、それから約1時間後の事である。
彼は、いわゆるハッキングの技術があるわけではない。単純にプログラムを使用して、ワンクリックでデータを奪ったに過ぎなかった。
考えてみれば、この段階で何かを疑うべきだったのは言うまでもないが。
午前6時58分、埼玉県草加市にある某コンビニ、そこでは朝と言う時間にもかかわらず、数十人と言う客が店内に確認できた。
行列までは出来ていないので、そこまでの規模ではないのだが、朝のコンビニとしては異様な光景だろう。
「グッズの配布は、まだか」
一人の男性はレジの前に展示されていたA4サイズのクリアファイルが並べられるのを、確認していた。
その柄は全てで5種類ほどか。この手のグッズは転売ヤーが現れるので、近年はファイルの隅っこ辺りに転売禁止とプリントされていたりする。
それでも転売ヤーは出現するのだ。つまり、歴史は……。
(なんだ、外の人だかりは……)
レジに並ぼうとお菓子類をコンビニでもよく見かけるかごに、彼は入れていた。あくまでもコンビニ専用の物であり、いわゆるマイかごではない。
そんなことをしたら、万引きと間違われるだろう。しかし、外から見える人影は警察と言うわけではなかった。
その途中で、入り口近辺の人影を気にしだしたのである。
彼は、商品に触れる前に商品バーコードを見つめていた。この行動には何の意味があるのかは、定かではない。
「動くな! ガーディアンだ」
姿を見せたのは、軽装型のスーツにメットを装着したパワードスーツの人物、ガーディアンの構成員だった。
支部ごとのエンブレムなどは未確認なので、もしかすると新規支部だろうか?
支部のエンブレムがプリントされていないという事は、覆面ガーディアンの可能性もゼロではないが……。
このガーディアン構成員の一人を目撃した一部の客は、自分が拘束されるのでは……と思ったらしい。
さすがに大騒ぎにはならなかったようだが、一種の撮影の一部と考えた店員やお客もいたのだろう。
しかし、ガーディアンの彼が拘束したのは……予想外の人物だったのである。
「一体、どういうことなんだ……」
拘束されたのは、先ほどお菓子類をかごに入れていた男性である。万引きでの逮捕と言うわけではない。
実は、彼が拘束されたのには理由があった。なお、ここの段階では守秘義務があるのかどうか不明だが、店員にも話してはいない。
一方で、「窃盗などの類で逮捕するわけではない」ことと「ガーディアン側の事情で詳細は話せない」ことは説明された。
拘束までの時間、わずか1分。
あまりにも手際が良すぎるので、ガーディアンがSNSの炎上阻止を理由に逮捕したのでは……と周囲の客は思ったくらいである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます