カオネナ2 ~髪を洗って、乾かしな♥️~

彩 としはる

第1話 プロローグ

「不合格だ!」


「ふ、不合格だ!」


「お、お前は、不合格だ!」


今日何人目の挑戦者だったろうか? ムガが、門番の馬鹿!と言いながら走り去る女生徒の後ろ姿に、手を振りながら

「顔洗って、寝直してね♥️」

と、声を掛けている。やがて、その女生徒の後ろ姿が見えなくなると、雷二郎は、はぁ~と、ため息をつく。

「雷ちゃん、お疲れ様。最近、多いよね。告白してくる娘。」

「ああ、もうすぐ夏休みだからなあ…。」

雷二郎は、晴れ渡る空を見上げる。そして、ムガの方を見ると、

「それにしても、お前は…。まるで、他人事のように言うな…。」

「だってさあ。みんな、ボクのどこがいいんだろうね? ボクさっぱり分からないよ。雷ちゃん分かる?」

「…。」

雷二郎は、ムガをしかめ面で見つめたあと、何も言わず立ち上がり、とっとと屋上から下る階段の方へ向かう。

「それより、雷ちゃん! ボクの新曲聞いてくれない?」

「はいはい。家に帰ったらな。」

「今度のは、自信作なんだ。YOUトンネルにアップしちゃおうかな!」

雷二郎は足を止め、ムガが追いつくのを待つ。

「ん、YOUトンネル? ちょっと待て! 俺に審査させろ。 お前は、平気で放送禁止ワードや、著作権引っ掛かりそうな言葉ぶちこむからな。」

「え~、雷ちゃん心配しすぎだよ。大丈夫だよ!」

「どこが大丈夫だ! この前、お前が作った曲、東京ゾンビ―ランドとかって曲の歌詞、オレは一生忘れないからな! リッキーダック! トナリノマウス!が血を吹き出して、踊り出す~♪ とか、マジでシャレにならんから! ※」

※リッキーマウスとトナリノダック・・・デジャニーランドの公式キャラクター

「え~、そうかなあ。もうすぐ夏だし、ホラー要素は必要じゃない? それにリッキーとトナリノが、上半身だけ入れ替わるのが、この歌詞のキモなんだけど?」

「うるさい、とにかく勝手にYOUトンネル上げるなよ!」

「雷ちゃん、厳しいよう。どうして、そこまでやるの?」

何を今さらという顔で、雷二郎が答える。

「どうして? どうしってって、俺は、お前の、ガーディアンだからだ!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る