第7話 ダンジョン部 ルール確認

「ありがとうございます。七星ななほしさん、金盞花きんせんかさん。門前払いされたら、どうしましょうと考えていたところでした」


「では、お庭でお茶でも。立ち話もなんですから」


「お構いなく。それより、ルールの確認を」


「ウチが飲みたいんですよ。こっちのモモも」


 あたしらはルール確認の体で、お茶を用意した。もちろん、毒などは入れない。相手は、貴重なお客さんである。


「おいしいですわ。羊羹はデパ地下でお買いになったのかしら。お茶の方は、福岡からのお取り寄せですわね?」


 愚地が、取り置きしている緑茶の出どころを言い当てた。


「おお。八女茶やめちゃをご存知で。って、まあお嬢様なら知ってるか」


 さすがのはるたんも、相手の舌に驚く。

 相手がヘビ人間だから、あたしも愚地の味覚は庶民型だと思っていた。上品なお茶の銘柄を知っているとは。


「ルールだけど、【かくれんぼ】+【鬼ごっこ】。ダンジョンマスターであるウチ……金盞花 晴子はるこが、旧校舎のどこかに隠れます。それを見つけて、出口まで連れ出したら、あなたたちの勝ちです」


 はるたんが簡単に、ルールを説明する。


「ただ、鬼ごっこの鬼……モンスターに阻まれることもあると」


「そう。で、鬼のリーダーである【キラー】は、こちらのモモ……七星 洲桃すももが担当します。彼女はあなたたちが行動を始めた一分後に、動き出す」

 

 はるたんは、かくれんぼのルールで戦う。

 巳柳チームはあたしといっしょに、鬼ごっこで競うのだ。隠れている、はるたんを探しつつ。


「あとは他の高校と、大差ないですわね」


「ええ。公式ルールに則って、競技します。では勝った後のご要望を、お聞かせ願えますか?」


「この学園をちょうだいいたしたく」


 ほら来た。

 やけにピリビリ来ると思っていたんだよなあ。


「よろしい。では、我々が勝ったら、ダンジョンに必要な備品をください。ウチは古のダンジョンゆえ、最新鋭の設備には慣れていませんので」


「はい。ご自由に」


「そんな、軽々しくお返事なさって、大丈夫なので?」


「ええ。相手にとって不足はございません。金盞花校長のお孫さん。平民とはいえ、『ダンジョン飯店』の社長令嬢でいらっしゃる七星さんと、戦えるなんて」


 そこまで調べてやがるってか。


「社長令嬢ーつっても、あたしはただの看板娘だけどな、オホホー」


 わざとらしく、あたしは高笑いをする。


「いえ。立派ですわ。ですが、我々だって負けてはおりません。我が巳柳も、精鋭揃い。必ず勝利を致します」


「じゃあ、はるたんが隠れるからちょっと待ってな」

 

「三分間ですわよね。お待ちしております」


 はるたんが旧校舎に入っていき、玄関を閉める。


 相手側も、作戦会議を始めたようだ。


 アナウンスを知らせるチャイムが鳴る。


『金盞花 晴子、ご用意できました。これよりダンジョンに入ってください』


 ダンジョン【ユリ園】の玄関が、ひとりでに開いた。



[ダンジョンの攻略が、開始されました。ダンジョンの入口を、封鎖いたします]


 旧校舎型ダンジョン:【ユリ園】の玄関が、閉じた。他の出入り口も、塞がれる。

 

[なお、ダンジョンマスター:【金盞花きんせんか 晴子はるこ】を見つけだだけでは、ダンジョンを出られません]


 脱出の方法は、二つ。このダンジョンに三つある【チェックポイント】に設置された魔法陣を、破壊すること。

 いうのは簡単だが、そこにははるたんが設置した魔物が鎮座している。


 校内アナウンスが、そう説明した。

 

[もしくは、ダンジョン【ユリ園】の【キラー】、七星ななほし 洲桃すももを倒してください。それで、ダンジョン出口が開きます]


 つまりあたしを倒せば、魔法陣を壊さなくてもダンジョンの扉は開く。



[制限時間は一時間です。それでは、スタート]



 試合開始を告げる、ブザーが鳴った。


 

「おっしゃあ、気合い入れていくぞオラア!」


 さっきまでの清楚お嬢様は、どこへ行ったのか。リーダーである愚地おろち 三澄みすみの口調が変わった。


 こいつも、ダンジョンは入ると人格が変わるタイプか。

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