ダンジョンを出禁にされたJK二人組は、母校の旧校舎型ダンジョンを守護するバイトを始めました。
椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞
第一章 お嬢様学校の旧校舎は、ダンジョンだった
第1話 JK冒険者、ダンジョンを出禁にされる
「えーっ! また出禁かよ!?」
あたしは、ダンジョンの受付に食って掛かる。
世界中にダンジョンができて一〇〇年、あたしたち人間はダンジョンの資源を手にしては生計を立てる仕事を始めた。
「お嬢ちゃんたち、強すぎるんだよ。このダンジョンの資源を、狩り尽くしちまう」
受付も、そう返してくる。
あたしらが暴れると、採算が取れなくなると。
「【スキル】だって、高校生以下のレベルを上回っているよ。これじゃあ、ウチに潜っても大した成果は得られないさ。帰った帰った」
しっしと、受付に手を払われた。
訓練さえ積めば、誰でもダンジョン攻略ができる。小学生からでも。ダンジョン攻略に挑める試験は、運転免許程度の難易度だ。
ダンジョン攻略で手に入れた【スキル】は、人間に人知を超えた能力を与える。といっても、発動は「ダンジョン内に限定」されてしまうが。
いわゆる「知識は持ち帰れるが、実際にできるわけじゃない」現象だ。
「くあー、楽しみにしてたのによお!」
せっかく中学最後の思い出に、アンダー十五、つまり十五歳以下限定最難関のダンジョンに挑めると思ったのに!
「背中のドラゴンキラーが、泣いてるぜ!」
あたしは、ショートヘアの頭をかきむしる。
この日のために、お年玉まではたいて武器を買ったのに。このままでは【ドラゴンキラー】が、鞘から出せないままサビついてしまう。
「仕方ないじゃん、モモ」
「くろかみろんぐ」と書かれた変Tを着た黒髪ロングの少女が、あたしの肩をポンと叩く。相方の【はるたん】だ。
「アンダー十五でウチらが潜れるダンジョンは、もう存在しないよ。高校入学まで待とうぜ」
はるたんに説得されて、あたしはココの攻略をあきらめる。
肩を落として、あたしらはダンジョン受付を後にした。
「ああああ! もーう! やけ食いだ!」
ナポリタンの山盛りを、あたしはズババーと頬張る。
「お腹を壊すぜ、モモ」
「止めるでない、はるたん! あんたはお嬢様学校に入学が決まっているが、あたしは実質就職だもんね!」
世界にダンジョンが現れて数日で、学校社会はすっかり様変わりした。
完全に実力主義になり、お受験や大学の存在価値などは、ほぼ無意味となった。
学会が欲しいのは、ダンジョンの深さや採取物の優位性、モンスターの危険性などに詳しい学者のみ。
また、その採取物から持たされる技術を活かせる研究施設や、それらを商業転用する企業などだ。
また、法律などもすっかり変わっている。
ただ学歴が欲しいだけの生徒など、どこも不要になった。
学校側は、生徒に「学生」という身分を保証するのみ。まともに勉強がしたいものなど、ほとんどいない。
生徒たちも、ほとんどがダンジョン活動で生計を立てる。
「ウチは、普通に勉強したいけどね。昔はありふれていた。『ふつーのJK』として過ごしたい」
携帯ゲーム機をカチャカチャやっているくせに、はるたんは「勉強がしたいです」とのたまう。ちなみに、彼女はプリンしか食っていない。
「お前んちは、ダンジョンが身近にありすぎるからだろ?」
はるたんが通う高校は、【私立
ちなみにはるたんの本名は「金盞花
つまり、彼女は身内が建てた学校に、そのまま入学する。
しかも、家族の手でムリヤリに。
「うん。ダンジョンのなにがいいんだか」
はるたんが遊んでいるゲームも、ノベル式のアドベンチャーだ。ファンタジーモノではなく、現代が舞台のミステリである。
ぶっちゃけダンジョンに飽きているはるたんは、遊ぶゲームもアドベンチャーか、FPSである。現実に即したゲームを好んで遊ぶのだ。
「いいぜ! 魔物とか、『ただぶん殴ってもいい存在』がその場にいるって感覚は!」
魔物は、ダンジョンでしか生きられない。こちらの世界では、飼育も不可能だ。
てっきりこちらの世界側も、「魔物は世界を蹂躙したいのだ」と思っていた。
しかし、彼らはダンジョン内で生存競争をしているに過ぎない。
勝てば食い、負ければ食われる。そんな世界だ。生きるか死ぬかは、ダンジョンですべて完結する。
「あたしは悠々自適に、ダンジョン生活を送るのさ」
「それに付き合わされる、ウチの身にも……んっ、だよ」
はるたんのスマホが、ブルッと震えた。家族からのメールらしいが。
「モモ。ウチの親が、お前んとこのスマホも鳴らすってよ」
「ああ。わかった」
あたしも、自分のスマホをチェックする。
「うええええ!?」
「どうした、モモ?」
「あたしが通うはずだった高校が、不あたり起こして廃校だってよ」
「おめでとさん。これでニート確定だな」
「違う違う。お前ンとこの高校に、お世話になることになったぜ」
「マジでか?」
スマホに届いたメールを、確認した。
【
このたび、あなたの金盞花学園入学を許可します。
金盞花学園 代表: 金盞花
他にも、手続きとか諸々の事柄が書かれている。
「幹代って、お前のばあちゃんだよな? いつもあたしに、稽古をつけてくれる」
「おん。そうだが?」
……マジだった。
どういうわけか、あたしは天下のお嬢様学校、金盞花学園に通うこととなった。
しかも、無償で。
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