目だけでいい

海星

第1話

「そろそろ引っ越そうと思うんだ。」

「なんで?」

「飽きてきた。」

「俺に?」

「それもある。」


「……」

「…一緒に行く?」


少しの沈黙の後に彼女から誘いを受けた。


「邪魔になる」

「私、ペットはよっぽの事がない限り捨てない。…家族だからね。」


僕は彼女の膝元で目を開けて驚いていた。


「そう。あんたはあたしの家族。」

「…他に、というかちゃんとした『男』いると思ってた。」

「一緒に暮らしててそれはないんじゃない?…じゃあ貴方は?いるの?『可愛い子』。」

「居ない。居るわけない。」

「そうよね?全部私に出させてるからね。」


「……」

「また出して欲しいの?」


彼女が僕を見て笑う。


「…溜めてみたい。」

「あたし襲われちゃうかも。」

「そんな失礼な事はしない。」


僕は立ち上がって彼女のおでこに優しくキスした。


「ねぇ。」

「ん?」

「やっぱり溜めたくない。出してほしい。」

「そうね。考えとく。」

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