しがない男のルーティーン
じゃせんちゃん
ルーティーン
朝日がまだ登っていない薄暗い時間に男は目を覚ます。
キッチンへ向かいコップ一杯の水を飲み、椅子に腰掛け完全に目が覚めるのを待つ。
コレがしがない男の毎朝寝起きのルーティーンだ。
ルーティーン、それは予め決めておいた特定の行動を行う事でメンタルをコントロールする方法の一つ。
男は生活の中にあらゆるルーティーンを決めていて大切にしている。
この後もルーティーン通りに軽くジョギングをしてストレッチや筋トレを行う予定だったのだが、一通のメールによって朝のルーティーンは破られた。
メールを着信したのは緊急の仕事用に使っている携帯電話で、男はため息をつきながらメール内容に目を通す。
全くクライアントはどうし毎度の事ながらこうも無茶難題を言って来るのだろうかと呆れつつも、仕事をしなければこちらのクビが危ない事を理解しているので早速準備に取り掛かる。
家中の仕事道具をかき集めて鞄に詰め込み車に乗ると、男は1日のルーティーンを守れない事にイラつき嫌々ながらもアクセルを踏み込み仕事現場に向かうのであった。
日が沈み辺りはすっかり暗くなった頃に男は仕事現場の近くに車を止め、もう何度も確認した仕事道具に不備が無いか点検していた。
何度やってもこの仕事は好きにはなれず転職を何度も考えてみたが、他の仕事をしている自分の姿が全く想像出来ない男はズルズルといつまでもこの仕事を続けている。
「大丈夫やれる、俺はしがない唯の男だ、仕事をこなして帰宅し、また明日変わらない朝を迎えるだけだ。」
不安な自分を鼓舞するように、自己暗示の様に同じセリフを呟きながら念入りにストレッチと指の体操を繰り返す。
コレも男の仕事前の大事なルーティーン、成功する姿をイメージしながらその動きを身体に馴染ませる。
「やれる、ヤレる、殺れる!」
男の職業は殺し屋、過去に何度も遂行不可能と思われた依頼をこなして生き残った事から裏の世界ではこう呼ばれている。
『死がない男』
数時間後、全身血まみれで満身創痍な男は帰宅し椅子に座り込む。
「今日もやったぞ生き残れた、ご褒美の一服と洒落込むか、コレも大事なルーティーンだからな」
男は懐からライターとケースを取り出し、ケースの中を覗き込む。
「あっ、
しがない男のルーティーン じゃせんちゃん @tya_tya_010
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