第73話 父の葬式?

 真奈美の父は恐らく、大学で20年以上教えた自分の教え子達にも同じように子に対する思いやりのあるアプローチを使っていたのだろう。


 兄の文彦が東京で計画した父の88歳の誕生日には、なんと全国から250人もの教え子が集まった。


 もちろん、真奈美とジュリアンもアメリカから駆けつけた。ホテルの大部屋を貸しきっての大パーティーでは、それぞれに尊敬の眼差しで父を見ている人々が列を作ってパーティーの主役に挨拶をしていた。


 父はすでに病いで弱っており、ドクターが横で見守っていた。


 彼は自分の死が近いことを知っていた。


 やっとの思いで立ち上がって父が述べた父独特の挨拶に、真奈美も含めた出席者は全員息を飲んだ。


「本日は、私の葬式にこうして皆で参加してくれて本当にありがとう!」


 真奈美の父にとって、まだ生きているうちに自分にとって大切な人々と時を一緒に過ごすというこれほど素晴らしい葬式はなかったのだろう。


 そこには、88歳のスターがいた。


 真奈美の父はそのパーティーの5ヵ月後、今度こそは正真正銘の天国に旅立って行ってしまったのだった。


 自分が何年もかけて綴った数々の日記を自分の娘や息子や孫がいつの日か手にして読むことで、何かしら尊いものを学んでくれることを夢見て・・・。


To be continued...

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