第19話 沖縄旅行最終日
拓馬の告白が失敗した。
拓馬の話によると僕と緒方さんが離れた後、拓馬は花火を使い切り片付けをする前に佐藤さんに告白した。そして佐藤さんは「ごめん」と言って走って逃げてしまったらしい。
僕は佐藤さんと拓馬を見ている限り、告白は成功するものだと思っていた。
こんな時、なんて声をかければ良いのか分からない。
どうしよ
きまずい
僕が掛ける言葉を探していると、
「悪かったな」
「せっかく手伝ってもらったのにいい報告ができなくて」
拓馬は僕に笑顔を向けて先に部屋に戻った。
このときの拓馬はとても悲しそうな笑顔だった。
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沖縄旅行最終日、
僕たちはお土産を買いに来ている。
本当ならとても盛り上がっているはずなのだが、僕たち4人の空気はとても気まずかった。
どうしたものか。
拓馬はほどではないが元気がないし、緒方さんは朝になっても怒っていた。
この空気をどうにかしないと!
「た、拓馬」
「朝ご飯食べてなかったけど大丈夫か?」
僕は
拓馬に話しかける。
「ん?」
「あー、別に大丈夫かな」
「昨日の告白がショックで朝は少し食欲がなかっただけ」
拓馬が昨日の事を思い出してさらに落ち込む。
『失敗』
よしっ、拓馬は後回しだ。
「緒方さん」
「いいお土産でも...」
僕は緒方さんに話しかけたが、
「佐藤さん!」
緒方さんは僕を無視して佐藤さんの所へ行ってしまう。
『失敗』
はぁー。
2人ともダメだった。
拓馬は告白を引きずり、緒方さんはなぜか怒っている。
どうしてらいいんだよ!
って言うかなんで僕がこんな事をしてるんだ?
僕ってこんな「友達のために!」って感じの人じゃなかったはずだ。
僕が一人で考え事をしていると、
「ねぇ、少しいい?」
僕に話しかけてきたのは拓馬でも緒方さんでもなく佐藤さんだった。
「どうしたの?」
「佐藤さん」
佐藤さんは少し気まずそうな感じだった。
「橘くんが元気ないのはわかってるけどなんで緒方さんが機嫌は機嫌が悪いの?」
「御薬袋くんなにか知ってる?」
佐藤さんが緒方さんの機嫌について聞いてきたがそれは僕も知りたいことだった。
一応、僕は緒方さんが怒り出した昨日の夜の事を説明する。
「御薬袋くん」
「それは君が悪いよ」
佐藤さんは呆れたように言った。
「え?僕が悪いの?」
「昨日は良いことしかやってないと思ったのに」
僕はここで佐藤さんは僕に対して怒っているのだとわかった。
なんとなく原因は自分だとわかっていた。あの時あの場にいたのは僕等2人だったし。
でも僕の何が原因なのかはわからない。
「僕のなにがダメだったのかな?」
僕は佐藤さんに聞いたが佐藤さんは教えてくれなかった。
佐藤さんは曰く自分で気づかないといけないらしい。
僕は考えてみる。
その前に1つ佐藤さんに質問する。
「佐藤さんて好きな人いるの?」
「え?」
佐藤さんが驚いたような声を出す。
「い、いるけど」
僕はその言葉で理解した。
拓馬は初めから勝ち目が無かったと。
「そうか」
「その人ってかっこよくて」
「うん」
「みんなから慕われてて」
「うん」
「誰にでもやさしくて」
「うん」
「運動も得意な人」
「う、うん」
佐藤さんは頬を赤くして言った。
これは確定だ。彼女は赤羽くんが好きなのだ。
「そ、そうか」
拓馬よ。もう少し佐藤さんのことをリサーチしてからだったな。
僕は拓馬を心のなかで憐れんだ。
しかし、僕は1つ疑問が浮かんだ。
赤羽くんが好きなのになぜこの旅行に来たのだ?
「佐藤さん最後の質問なんでけど」
「なんで沖縄旅行に来てくれたんだ?」
僕はわけがわからなくなり佐藤さんに聞いた。
「い、言わないとダメ?」
佐藤さんは恥ずかしそうに言う。
「いや、無理にじゃないけど」
「佐藤さんは好きな人がいるのになんでこの旅行に来てくれたのか疑問に思っただけ」
僕は質問の無理強いは辞めて離れようとする。
「待って」
佐藤さんは離れていく僕の裾を掴んだ。
「私が今回の旅行に来た理由は...」
僕は一瞬で空気の流れを理解した。
これは!告白されるやつだ!!
僕は覚悟をして佐藤さんの言葉を待った。
「旅行に来た理由は...」
「橘くんが好きだから!!!」
だよね。僕なんかが告白されるわけが無い。そもそもさっきの条件は当てはまらないし。
しかし、ここでも1つ疑問。それならばなぜ彼女は拓馬の告白を断ったのか。
「拓馬のことが好きならなんで告白を断ったの?」
僕はもう一度質問をした。
「私断ったつもりじゃないけど」
「え?」
「え?」
僕は事情を聞いた。
あの時、拓馬は佐藤さんに告白をした。佐藤さんはとても好きだった人からの告白でとても嬉しくて泣いてしまったそうだ。上手く返事ができなくて一度その場を離れようとした時、とっさに「ごめん」と言ってしまった。その後、返事をしようとしたら僕と拓馬が喋っていて、朝になっても拓馬は部屋から出てこなかったと。
完全なすれ違いだ。
「なんだ佐藤さんは拓馬が好きなのか」
「だったら...」
僕が「早く付き合えばいいのに」と言おうとした時、後ろで拓馬が荷物を落とした。
「え?」
僕と佐藤さんは拓馬のほうを見た。
「もしかして今の聞いてた?」
「うん」
拓馬は正直に答えた。
僕は今座っている場所を拓馬に譲り佐藤さんと二人っきりにした。
これで1つ目の問題は解決。
よかった。
それにしても情報量が多かった。
実は佐藤さんは拓馬が好きで、2人はすれ違いを起こしていて、その話が拓馬にバレる。
でも、2人はこれで恋人同士になれるだろう。
あとは緒方さんだ。
どうしたものか。
僕はあのときのことを何度も何度も思い返した。
しかし、僕は自分の悪い所がわからず、そのまま帰りの飛行機に乗った。
カチッ
音がなり255→254になる。
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