第5話 誤解
5月も終わる。そして6月になり梅雨の時期に入る。
僕は6月が嫌いだ。何故ならお昼に体育館裏へ行くことができないからだ。
教室にはクラスのみんながいてうるさい。だから僕はすぐにご飯を食べ図書室に向かう。
図書室はいい。たくさんの本があるし何より静かだ。
ここなら静かなお昼休憩が過ごせる。
「ここに居たんだ」
いきなり話しかけられる。それはつい先日まで一緒にお弁当を食べていた人の声だ。
「探したんだよ」
彼女、緒方香織は僕を探していたらしい。
「なんだ?」
僕は思った事を口にする。
「なんだ?じゃないでしょ!」
「なんで何も言わないの!?」
「何も言わないとはどういうことだ?」
彼女が何を言いたいのかわからない。
「昨日のメッセージ!」
「何あれ?」
「『しばらく体育館裏にはいかないしお弁当はいらない』って」
「意味わからない!」
彼女が涙目になりながら言い寄ってくる。
流石にこれはまずい。図書室は人こそ少ないがいないわけではない。ましてや男のひとの前で泣きそうな女の人の絵面は絶対目立つし噂されるだろう。
「ちょっと来て」
そう言い僕は図書室の奥に彼女を連れて行き話をすることにした。
「それでどういうことなんだ?」
彼女に聞く。
「昨日の連絡...」
「あれどう言うこと?」
「あれは、梅雨だから体育館裏には行けないし教室でお弁当を交換するわけにはいかないだろ?」
「そうだったの?」
彼女は何か誤解をしていたらしい。
「私嫌われたのかと思った」
「よかった、せっかくここまで来たのに...」
最後の言葉の意味はわからなかったが誤解がとけたのなら良かった。
「でも、そしたらなんで返信くれなかったの?」
「返信?」
そう言われて携帯を確認すると
「あっ」
『どうゆうこと?』そう返信がきていた。
僕は自分の言いたい事をいって彼女の返信に気づかなかったのだ。
「ねぇ、これって紛らわしい連絡をした事と返信をほったらかしにした御薬袋くんが悪いよね?」
彼女は笑顔でそう言う。ただし恐ろしい笑顔で、だ。
「一度だけ私の言う事を聞いて」
「はい」
「よし、それじゃあ許す」
良かった、許してくれるらしい。
「それでお願いって何?」
と僕が聞くが彼女は、
「考えてないからまた今度ね」
そう言った。
僕はお願いの内容が軽いものだといいなぁと願わずにはいられなかった。
カチッ
音がなり337→336になる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます