決着 7-7

「どうしたんだろう」

 疑問に思いつぶやき少し待っていると、救急箱を持って部屋に戻ってきた。


「消毒しないと」

「いや、大丈夫だから」

「だめだよ、ばい菌が入ったら危ないから。ほら」


 そう言いながらズイッと顔を近づける。

 ガーゼに消毒液を数滴垂らし、それを腫れて赤くなった右頬に数回あてる。


「いてっ」


 消毒液が傷に染みこみ、痛みを感じ距離を離す。

 しかし離れた分こちらに身を寄せ。


「もう少しだから」


 そう言われ、傷が染みるのを我慢しその場でじっとする。


 近い。

 橘凜の顔が目と鼻の先にある。

 橘凜は真剣な表情で消毒してくれている。



「これでよし」

 終わったのか最後に絆創膏を貼ってくれた。


「ありがとう」

 お礼を言って部屋を後にしようと、立ち上がりドアノブに手をかける。


「こちらこそありがとう」

「いや、俺は何も」


 お礼を言われることはないもしていない、勝手に感情的になり動いただけだ、それに最終的に事を納めたのは田中君気がする。


「お礼なら田中君に言ってあげて」

「うん。それはもちろんだけど、米沢君が大原さんに対して言ってくれた時嬉しかったし、なんか心のモヤモヤが晴れた気がするから」

「そっか」


 そう言われるとあの行動にも意味があった気がした。


「じゃあ、おやすみ」

「もうあんなことしないでね」

「......」


 返事はせず部屋を後にする。

 

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