顔の見えない運命の人

学生作家志望

「姫の娘様が誕生されたぞ!祝え!!」



「うおおおおおっ!!」



ある巨大な王国にて、王の娘が産まれた。国王の娘ともなれば、立派に育って将来の国の政治を担っていく存在にならなければならなかった。そのため、その女の子に向けられた周りからの期待はとんでもなく巨大なものに膨らんでいた。



「それはそれは美しい王女、なんだろうなぁ………!」



誕生を知った国の民たちはがいっせいにその娘の顔を一度見ようと王の住む城へと向かった。



この国の伝統行事として、王の娘息子が産まれると大衆の前に、挨拶として皇族全員が現れるというものがある。


民たちはその行事が始まるのを今か今かと城の門の手前で待ち侘びていた。将来の国を担うその王女の顔を、目の前で拝もうと。



「きた、きたぞ………」



いよいよ巨大な城の門がゆっくりと開かれていった。静かにそれを見つめる数百万の人々。そしてついに現れたその顔に、全員が集中して猛烈な視線を浴びせた。



「なんだあの顔。」



「おい、なんてことを………!」



1人の民が小声で言うと周りの空気も凍りついた。隣にいた民が慌てて注意をして止めようとするが、周りから非難されることはまったくなかった。



「あんたの言う通りだよ、ありゃハズレだな。ああいうのがたまに産まれんだよ。」



民が皇族に決して聞こえることがないように注意を図りながら、その顔に向かって毒を吐いた。


この国を担う将来の女王ともなる人物として、「顔」は特に重視されている部分。なぜならば、現在の女王、国王と同じく結婚して子供を産む必要があるためだ。


そのため、基本的に顔が整っていなければ民からは冷たい視線を送られ、自然と王女は孤立していってしまうのだ。



この少女が育った時、いったい誰が興味を持つのか、民は想像して呆れ、ため息を吐いてその場を後にした。



 ◆


「結婚したいんです、僕は。あの人と。」



「ははっw何を言ってるんだ、顔が良くないのになんの冗談だ?」



「本当さ、本当だとも、小さい時に見てたんだあの門から出てくるあの人を。その時から、気になっていた。マシーさん、手紙の書き方教えてください。」



「………正気か?オレリアン。」



「ええ。」

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