第8話 300万は多いらしいよ

「初配信の話ね…あれは緊張したなぁ。でもみんなが暖かいコメントくれて、すごく助けられたよ。」


「それにしても、あの時はここまで大きくなるなんて思ってなかったなぁ。」

零は椅子にもたれながら、少し懐かしむような口調で語り始めた。


「正直、初めて配信ボタンを押したときは10人くらい見てくれたらいいなって思ってたんだよ。でも、気づいたら同接(同時視聴者数)が1万人超えててさ。それで、みんなから『声がいい』とか『もっと話して』とか言われて…まぁ、嬉しかったけどめっちゃ焦ったよね。」


コメント欄はその頃を知る視聴者たちで盛り上がる。


▷初配信、懐かしい!

▷ゼロ様、最初からスケベボイス出してたよねw

▷あのときの「愛してるボイス」で全員落ちた説。


「いやいや、あの愛してるボイスはマジで偶然だから!緊張してつい出ちゃっただけで、元から狙ってたわけじゃないってば!」

零が笑いながら否定すると、さらにコメント欄が賑わった。


「でも、あれがきっかけで今のみんなと繋がれてるんだから、結果オーライって感じだよね。ほんと感謝してるよ。」

零は真剣な表情で画面越しに語りかける。


▷ゼロ様、こちらこそありがとう!

▷これからもずっと応援します!

▷300万人は通過点だよね!


「みんな、ありがとう。これからも全力で楽しませるから、ついてきてね!」


零の言葉に応えるように、スパチャとコメントが次々と流れていく。


コメント欄で▷(5万円)ゼロ様の好きなゲームとタイプを教えてください。というコメントが赤く強調表示される。


「5万もくれるの?!ありがとうございます。好きなゲームはサッカー系とアクションRPGかな〜。」

うん。本当に驚いた。ウイイレをやりたいなと思って似たようなゲームの''eサッカー''ってゲームを開いてみたら、メッシもデパウルもヴィニシウスもみんな女性になってるんだもん。


▷男の子がサッカー好きなの珍しい

▷サッカーをするゼロ様… 捗る

▷↑ナニが捗るんですかぁ?

▷好きなタイプは?

▷タイプ!


「好きなタイプは髪型がショートカットで僕への愛がちょっと重めの子かな...。」


▷ショートカットの私→勝利

▷今から切ってきます

▷美容院予約しました

▷男の人ってさばさば系が好きなんじゃないの?

▷↑一般的にはそうだと思われ


この世界だとやはり自分への欲を感じないサバサバ系が良いらしい。俺は自分が変わってる自覚もあるしね。

杏は本当に重かったなぁ。それが良いんだけどね。


俺が会社で浮気しないか盗聴器をスーツとバックに仕込んでたし、仕事が終わったら家に帰るまでずっと電話しなきゃいけないルールも作られたし。挙句の果てには手の甲に位置情報を発信するICチップを埋めさせられた。

家ではずっとベッタリで甘々で可愛かったけどね!


「まぁ、ショートカットで重めの愛って言ったけど、あくまで僕の好みだからね。みんなは自分らしくいてくれればそれが一番嬉しいよ。」

零が微笑みながらそう付け加えると、コメント欄はさらに活気づいた。


▷ゼロ様のそういうとこ好き!

▷それでも切ります!愛が重いのも問題ないです!

▷重すぎても良いってこと?

▷ゼロ様、みんなもう美容院行ってますよw


「いや、ちょっと待って、美容院行くスピード早すぎない?それはそれで怖いんだけど!」

零は苦笑いしながら画面にツッコミを入れる。しかし、内心ではそんな反応を楽しんでいる自分に気づいていた。


「でもさぁ、こうやってみんなが色々してくれるのって、僕の前までの生活ではあんまりなかったから新鮮なんだよね。みんな優しいし、本当にありがたいよ。」


視聴者への感謝を述べつつも、零の頭の中には自然と前世での記憶がよぎる。特に、前世の恋人だった杏との日々は鮮烈だった。


「重い愛が好きっていうのは、前世の影響かもなぁ…」

零はぽつりと呟いたが、その声は配信では聞こえない程度の小ささだった。


杏は確かに過剰なまでの愛情を注いでくれた。最初は驚いたが、次第にそれが心地よくなっていったのを覚えている。


「まぁ、杏は色々と極端だったけど、あの情熱的な感じが好きだったんだよね。ちょっと懐かしいなぁ。」

零はふと笑みを浮かべると、視聴者にはわからない思い出に浸りつつも配信を続けるべく気を取り直した。


「よし、じゃあそろそろ次の話題に移ろっか!他に何か質問ある?」


▷300万人記念だけど、この配信以外にもなにかするの?

▷ゾルダはまだ終わってないけど次のゲームの予定とかあったりする?

▷ボイス出してください。テーマは孕みで

▷ファンネームとか決めないんですか?

た4つのコメントが目に入る


「よし、じゃあ目に付いたものを1つずつ答えていこうか。ゾルダの次のゲームはまだ決まってないかな。一応リンクにある質問箱みたいなので配信内容の募集もしてるんだけどゾルダが終わったあとに見てリクエスト数が1番多いゲームにしようかなって思ってるよ。」

「300万人記念なんだけどね。うーん...あんま思い付かん!他の人はどんな事やってるのか教えてくれない?」


零がそう問いかけると、コメント欄が瞬く間にアイデアで埋まっていく。


▷歌枠とかどうですか?ゼロ様の歌声聴きたい!

▷グッズ発売記念とか!ゼロ様のアクスタ欲しい!

▷24時間耐久配信!

▷何もしなくてもゼロ様が存在するだけでいいよ!


「え、歌枠?いやいや、僕歌とかめちゃくちゃ下手だから!配信事故になるよ?」

零は笑いながら否定するものの、コメント欄は「聴きたい!」という声で溢れている。


「うーん、耐久配信もねぇ…僕、ゲームに夢中になりすぎるから、24時間とか普通にやっちゃいそうで怖いよね。」

冗談を交えながらも、零は視聴者の意見を真剣に考え始める。


「グッズ発売っていうのも面白そうだなぁ。でも、僕の顔が付いたアクスタとか本当に需要あるの?自分じゃちょっと想像できないんだけど。」


▷需要しかないです!

▷絶対買う!全種類揃えます!

▷ゼロ様のグッズを部屋中に飾りたい!


「おお、そこまで言ってもらえるとやる気出るなぁ。じゃあ、ちょっと裏で実はグッズ作りませんか?って声掛けてもらってるからその会社の人と連絡取って相談してみるよ。」


続いて、視線が「ファンネーム」のコメントに移る。


「ファンネームかぁ…確かに、みんなのことを呼ぶ時に便利だよね。でも、僕が決めるよりみんなで考えたほうが楽しいんじゃない?」


コメント欄に再び提案が飛び交う。


▷ゼロッコ!

▷ナナシノ民!

▷リバースレディ!

▷重愛者(ヘビラバーズ)!


「ゼロッコって…なんか可愛すぎない?僕のイメージってそんな感じなの?」

零が苦笑いすると、「可愛い!」というコメントが一斉に流れる。


「ナナシノ民はちょっとカッコいいね。でもなんかミステリアスすぎる感じもする。」


▷それがいいんじゃないですか?

▷ゼロ様の神秘的なイメージにピッタリ!


「うーん、でもまだ決めきれないなぁ。よし、これもアンケートにしよう!後で投票できるようにしておくから、みんな参加してね。」


最後に、「ボイス」のコメントについて触れる。


「孕みボイスってさ、みんな軽い気持ちで言ってるのかもしれないけど、僕は意外と真剣に考えるタイプだからね?ただ出すだけじゃなくて、ちゃんと雰囲気とかテーマにこだわりたいんだよ。」


▷真剣なゼロ様も好き!

▷ぜひこだわってください!

▷期待してます!

▷クソえっどいの期待


「まず孕みボイスって何?って話だけどねR18とかになっちゃうでしょ。だいたいはおかえりボイスとかなんじゃないの?」


▷孕みたいんです

▷R18とかの年齢制限は10年くらい前に無くなったよ。性に関してはオープンであるべきと国会の肉食女性達が決めたから。酒とタバコは20歳までダメだけど


「へ〜、うん。じゃあ孕みボイスもアリなのか??それでも、こういうのは記念配信で出すっていうのもアリだよね。これも要望が多かったら考えるから、リクエスト送っておいて!」


零は次々に寄せられるコメントに答えながら、自然とリスナーとの距離感を縮めていく。その様子は、彼のカリスマ性と飾らない人柄を示しており、コメント欄の熱気もますます高まっていった。


「さて、じゃあ次の質問はどれにしようかなー。みんな、どんどん送ってね!」

そんな軽快な声とともに、配信はさらに盛り上がりを見せていき様々な話題を喋ったあと1度休憩時間をとる事にし視聴者にそれを伝えるとカメラとマイクの電源をoffにし待機画面に戻しbgmをかけると、安心した零はベッドに倒れて行った。


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