第4話 翌日は失敗しやすい

目を覚ますと頭が柔らかい感覚に包まれている。

「なんだこれ。」

戸惑っていると頭の上から声が聞こえてきた

「あら、零ちゃん起きたの?」

母さんに包まれていることに文句は言えないだってお節介な母さんだから。

「母さん、いま何時かわかる?」

「えーとね、ちょっと待ってねぇ。」

今日は2時から配信なので1時からは準備をしたいのだ。

「零ちゃん。お母さんのこと嫌いにならないでね?今ね午後の2時半なの...」

「ん?」

思考が停止する

今日の配信は2時からと言い今は2時半だと。

(うん、そんな訳ない)

そう思い母さんに聞き返す。

「母さん、もう一度お願い」

「ごめんね!!昨日の零ちゃんの配信が終わって零ちゃんが寝てる布団に入ったのは良かったんだけど朝になって零ちゃんが気持ちよさそうに寝てるの見て起こせないなぁって思っちゃって...」

「謝ることないよ!起きれなかった僕が悪いんだ。」

母さんの腕から抜けスマホでλラムダを開きエゴサをしてみる。

すると


▷ゼロ様の配信って2時からだよね?

▷ゼロ様のチャンネルでまだ枠は立ってないの?

▷ゼロ様のλも昨日の初配信の告知以降何も投稿ないしなぁ

などなどの心配の声が多数あった。

頭の中で思考がぐるぐると回る。


「やばい、やばい!」

昨日の初配信で盛り上がり、その勢いを大事にしたかったのに、こんな大遅刻をやらかすなんて――。


「零ちゃん、大丈夫?そんなに焦らなくても…」

母さんが心配そうに声をかけてくる。けれど、今はそれどころじゃない。


「ありがとう、母さん。でも、まずはみんなに謝らないと!」

スマホを握りしめ、すぐにλにログインする。まずは投稿だ。


「えっと…どう書けばいい?」

昨日の配信で自分を応援してくれた人たちの顔が浮かぶ。皆、自分の言葉や行動を信じてくれているのに、こんな形で裏切るわけにはいかない。


震える指で画面をタップし、投稿内容を打ち込む。


ゼロ|零

「みんな、本当にごめん!今日の配信、完全に寝坊してしまった…。今すぐ準備して、配信を開始するから、もしよかったらもう少しだけ待ってくれると嬉しいです!」


投稿を終えた瞬間、通知が次々と返ってくる。


▷大丈夫だよ!待ってるね~!

▷ゼロ様、無理しないで準備してね!

▷寝坊とかかわいいかよw


「うわ…」

思わずスマホを握りしめる。怒られる覚悟だったのに、優しい言葉ばかりだ。


「…ありがとう。」

小さく呟くと、母さんが微笑みながら後ろから頭を撫でてくる。


「零ちゃん、良かったね。皆、零ちゃんのこと大好きみたいだよ。」


「…うん。でも、このままじゃ終われない。全力で配信する!」

気持ちを切り替え、急いで配信の準備を始める。


配信開始時間、2時45分。

画面の向こうには、すでにたくさんの視聴者が待機していた。


「みんな、本当にごめん!」

深く頭を下げると、コメント欄がすぐに埋まる。


▷ゼロ様、謝らなくていいよ~

▷遅刻するぐらい誰にでもある!気にしないで!

▷むしろ寝坊エピ可愛すぎたw


「えっと…ありがとう。でも、今日はその分、もっと楽しい時間を届けるから!」

緊張を抱えながらも、ゼロはゆっくりと顔を上げる。そして、いつものように、少し照れくさそうな笑顔で話し始めた。


「それじゃあ、改めて――配信、始めます!」

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