第6羽 三羽ガラスの取り調べ……?

「あ、あれ? もしかして、お前ら道わかんないんじゃないの?」


 俺がそう言うと、三羽のカラスはぴたりと動きを止め、お互いに顔を見合わせた。どうやら図星らしい。ここはチャンスだ。


「えっと、あの方の居場所は確か……えーっと……」


 一羽が目をくるくるさせている。もう一羽は頭をかしげて、「さっきの分かれ道を右だったか、左だったか」とぼやいている。三羽目はというと、足元の小石をつついて遊んでいる。


「なあ、お前たち、リーダーは誰なんだ?」


 俺が尋ねると、三羽は一斉に「俺だ!」と叫んだ。それがさらに混乱を招き、また口論が始まった。


「違う、俺がリーダーだ!」


「いやいや、俺がこの任務を仕切っているんだ!」


「お前ら何言ってんだ、リーダーは俺だろ!」


 なんだかこのままでも彼らを混乱させていれば、そのうち勝手に解散するんじゃないか、と思い始める。俺は少し冷静さを取り戻し、もう少し彼らを転がしてみることにした。


「まあ、リーダーが誰でもいいけどさ、俺が元人間だって話は誰から聞いたんだ?」


 三羽は一瞬黙り込んだ後、また同時に口を開いた。


「いや、それは……」


「その、ちょっと前に……」


「えーっと……カラスバーで聞いたんだよ!」


 カラスバー? そんなものがあるのか。このカラスたちが昼間っから飲んだくれてるのかと思うと、ちょっとおかしくなってきた。


「ふーん、それで、どんな噂が立ってるわけ? 俺が元人間だってだけ? 他にも何か面白い話、あるんじゃないの?」


 三羽はまたお互いを見て、今度は囁き合い始めた。「お前が言えよ」「いや、お前が先に言えよ」なんて声が聞こえる。


「ええい、もういい! お前、行くぞ!」


 一羽が急に大声を上げて飛び立った。残りの二羽も慌てて後を追うように飛び立つが、それぞれ違う方向に飛び去って行った。


 ……もしかして、俺、助かった?


 俺はその場に残されたまま、三羽が空のあちこちでぐるぐる回っているのを見上げながら、少し笑ってしまった。彼らが戻ってくるまでに逃げるか、別の方法でうまく切り抜ける策を練るか……。


「ま、いっか。とりあえず、カラスバーに行ってみるか」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る