第3羽 我が家から脱出せよ!
目の前にはドア、後ろにはおたまを持った母さん。これぞ、絶対絶命というやつだ。って、そんなことを考えている場合じゃない!
ドアノブを回せないならやることは一つ。ひとまず隠れる。どこに? カラスの長所を活かすしかない。ならば翼を使って本棚の上に隠れよう、そうしよう。
俺は母さんの横をすり抜けると、今は亡き父さんの書斎に逃げ込む。さすがに母さんもここを探しはしまい。
さて、問題はどうやってドアノブという難関を突破するかだ? ここは書斎。ドアノブを回せるようなものはない。では、キッチンに行くか? あそこにはキッチン用具が所狭しと片付けられている。トングなんかを使えば開けられるのかもしれない。しかし、あそこには母さんがいる。果たしてうまく逃げ切れるかどうか。
その時、書斎に置かれた父さんの原稿が目に入った。原稿は紐によって綴じられている。そうだ、これだ!
俺は原稿から紐を引き抜くと、再び玄関に向かう。ドアノブに紐をかけると、くちばしで精一杯引っ張る。すると、思った通り、ドアノブがガチャリと音を立てると、玄関の扉が開く。
「カラス、貴様ここにいたのね! 逃がさないわよ!」
母さんごめんよ、人間に戻ったら事情を説明するから。
俺は黒い翼を羽ばたかせると空に飛び立った。広大な大空へと。
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