ラグナロク
たまご納豆
序章
地球は静かに悲鳴を上げていた。地殻の深部、目に見えないところで、何億年もの時をかけて育まれた平衡が徐々に崩れつつあった。大地の脈動は、かつてないほど乱れ、海の波は常に高くうねり、風はかつてない冷たさと熱を繰り返していた。人類が築き上げた文明は、地球の自然を制圧し、限界まで追い詰めた。それは、いつか訪れる破滅の前兆に過ぎなかった。
だが、人類はそれに気づいていなかった。科学の力で大地を切り開き、海を汚し、空を覆う。だが、どれだけ技術が進化しようとも、地球という母なる存在は忘れ去られることなく、静かにその意思を固めつつあった。
ある夜、選ばれし者たちは奇妙な夢を見た。暗黒の海の中、巨大な蛇がうねり、天空を裂く狼が吠え、火の巨人が大地を焼き尽くす光景が、鮮明に脳裏に焼き付いた。その夢は、あまりにも現実味があり、彼らはただの夢だとは思えなかった。そして、その夢の中で、彼らは見知らぬ存在の声を聞いた。
「人類は限界を超えた。増えすぎた命、破壊された自然。再びバランスを取り戻す時が来た。選ばれし者達よ、お前達には二つの道がある。絶滅の運命に身を委ねるか、それとも、この滅びの運命に抗うか。選ぶのはお前達だ。」
目が覚めた彼らは、ただの悪夢だと思いたかった。しかし、現実はそれを許さなかった。遠く離れた場所にいるはずの人々が、同じ夢を見たという噂が広まり始めた。そして、その数日後、世界中のニュースが報じたのは、各国で始まった異常現象の数々だった。
突然の地震、海の異常な波、空を覆う奇妙なオーロラ。科学では説明できない現象が次々と発生し、人々は不安と恐怖に包まれた。そして、ついに中国の大都市に、最初の「それ」が現れた。
その日、選ばれし者たちは、再び夢の中で聞いた声を思い出していた。
「ラグナロクが始まった。」
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