3
カイナ神社で出会った千代包という男といい、今は味方だがそこに現れたイカリを名乗る男といい、見知らぬ
小太郎は
前にしていた岩の上に立つ。
同時に喜三郎と弥二郎も動いた。
二人は岩の両側へ周り、小太郎よりもやや前に出て武器を構えた。
三角形に布陣。一人が強襲を受けても残り二人の連携が絶たれることはない。横一列に並ぶよりも深みのある構えだ。
男も剣を抜いた。
日緋色金の剣だった。
小太郎は驚かなかった。初めて見たときはその性能に恐れを抱いたが、もう見慣れている。
男が構える。
小太郎は左右に視線を散らせた。同時に襲いかかるという合図を送ったのだ。
息を揃えてまさに襲いかかろうとした瞬間だった。
武甕槌が片手を小太郎に向けて、待ちな待ちなと言った。
「そこまで敵意を見せるってことは、やっぱりおまえが小太郎だな。おめえさんの話は聞いているぜ。とんでもねえ怪力の持ち主だってな」
「だからどうした」
「その力の前には、俺も勝てるかどうかちょっと分からねえ。だからあんまり勝負はしたくねえのさ」
「おいらをとっちめると言った割には弱気じゃねえか。どういうことだ」
「勝負になったらわからねえって話だよ」
武甕槌は
「勝負に勝った者が生き残るってのがこの世の常だが、そうじゃねえ場合もあるのさ。勝った負けたって話になる前に――つまりは勝負する以前に――勝敗が決まっちまうことだってあるんだよ」
武甕槌は懐に入れていた手を抜いた。
「これを見ろ」
その手には紫色の布が握られていた。
武甕槌は両手でそれを広げた。
正方形の布だった。
紫一色の布の中央に――。
水色の花の模様が染められている。
「
小太郎にはそれが何なのかわからなかった。
弥二郎なら知っているだろうかと横目に見たが、弥二郎も首を傾げている。
喜三郎は変わらず敵を見据えたままだ。
「それがどうしたってんだ。そんな布切れ一枚でおいらを止めることはできねえよ」
小太郎は気を取り直して、武甕槌に躍りかかろうと、足に力を込めた。
まさにその瞬間だ。
「やめろ小太郎!」
遠くから聞こえてきた声がそれを止めた。
呼吸をずらされて小太郎は舌打ちをした。振り返る。
イカリが駆けてくるところだった。
「イカリ、あれはなんだ」
弥二郎が尋ねた。
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