色んな事情

「そんで、俺は今どこにむこうてるん?」

「今向かっているのは――」

「「「尖晶様のお家です」!」……」

「お、おう……」


見事なまでの語尾の差やな。


「ああ、僕の家に向かっているんだ」

「ってことは、やっぱ俺裁かれるん??」

「君の処遇は、まあ、後で決めるさ」


えっ。

それバリ怖いんやけど。


「あっ、処遇やらいう前に帰ったらええんちゃう?」

「「「「……」」」」


俺、またあかんこと言うてもうた?


その後の(馬)車内は静まり返ってしまい、

居心地が悪かったのなんの。





「着きましたぁ〜」

「では、ここで降りて頂けますか?」

「……はへ??」


え、え?

こいつなにもんなん。


目の前に広がるんはおっきな一本の道。

端には京都のように小路が沢山ある。

薄暗い空を赤、紫、青、と怪しげに宙に漂いながら光る提灯。

そこをとおってるんは綺麗な着物とかんざしで着飾った女と、鼻の下を伸ばす男達やった。

彼らが通るたんびに甘ったるい匂いが鼻をかすめていく。


「え、あ。ここって……」

「あんたはこの狐の面をつけろ」

「な、なんでや!?」

「いいから行くぞ。一言も喋るな。」


聞いたこともないような気迫のある声で喋りよった。


カッ、カツッ、カッ、カタッ……


女と男の会話があちらこちらで聴こえる。

騒がしい道なのに、尖晶の心地よい下駄の音が響いていた。


「こんばんはぁ、若旦那様」

「よお!若旦那!!」


わかだんな?


「その子は新しいかい?随分と成長しているようだが。

突き出しの際には俺に一声くれよな」

「まあ!?あちきはどうでもいいと?」

「こらこら蜻蛉かげろう、お客も困るであろう?」

「いやいや、大丈夫だよ旦那。な、蜻蛉?機嫌なおして……」


あっちゃー、あのおっさんやってもうたな。






「翔、もう仮面外して良いぞ」

「なあ、自分はこの遊郭(?)の運営者なん?」

「複雑な事情なんでね、父から受け継いだんだよ。薄雲うすぐも、入っておいで」

「しつれいしんす。」


襖を開けて入ってきたのは蛇女やった。

白粉おしろいに唇には赤い紅をさしとり、豪華な白と紫の蝶の着物を着とって、

スッとした切れ目はクールな印象を与えとる。

さっきの蜻蛉は犬、やったか?


「お前の鉄御納戸てつおなんどの尾は何時見ても綺麗だね」

「そんなことありんせん、

旦那さまは、あちきに占いのことを伝えに越させたのでありんしょう?」

「いやいやいや、ちょい待ってや。キャパオーバー……」


えぇ、めっっちゃ美人やんけ。

ドストライクすぎひん?

俺、帰りたないかも。


「ふぅー……。すんまへんね、お姉様。少し取り乱してもうた。」

「それで、占いのことなんだけど、あちきはやっぱりこの人しかいないと思いんす」


華麗なスルー!!

そういうところもしびれんなぁ!!


「分かったよ、薄雲。翔、お願いがある。」

「な、なんや?」

「……うちで働いてくれないか?」

「はぁ!?!?!?」

「あんたのような彷徨子まよいごが最近多くなってきているんだよ。

こっちの一方的な事情だが頼む!!!!!」




***********


【次回 小休憩🍵(キャラ紹介)】


「薄雲さん、めっちゃタイプなんけやどぉ。美人過ぎる〜」

「うちの1なんでね」

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