第8話「荒野の砂漠へ」
ルカの目は暗い。果てしなく。
「ガリソン先生、もうダメかもしれない。
生きてる。でも、ハルスの医療では目を
覚まさないって。どうして」
白亜の宮殿がなお一層白く映える病院の待合室。
ミハルは分かってしまった。
『どうして私を連れて
行ってくれなかったんですか』
ルカはそういう子だ。
ガリソンは彼女に、下級生達を守らせたという。
他の教師たちが手も足も出なかったダンド。
彼女は一撃で追い払ったとディムに聞いた。
自分の学年で最強。
間違いなくハルス魔導学院の最高傑作。
それも開学以来、最高の。彼女は恐らく。
いや絶対に立ち入ってはいけない。
親友だからこそ。
ルカの胸中。
自分がルカやククルの様に強ければ
少なくともあのダンドという怪人を
捕まえる事はできた。悔しさで震える。
それ以上にククルを
「魔導人形」と呼んでいた事が気掛かりだ。
覚知なし。生まれた時から「強力な魔導」
を使える。『ククルが人間ではない』。
頭を掠めるその可能性。
けれどミハルは微笑む。
春の野原の様に美しく強く。
「間違っているのは世界。
あの子じゃない」
「あの子が人間じゃないなら、
きっと間違いは人間」
揺るがない幼き日の決意。
彼女はククルが幸せになる
世界を作りたかった。
目指すは外界。荒野の砂漠へ
いつかのつり橋の向こうに
茫漠たる砂漠が広がっている。
ハルスの吹雪は熱波を遮断していた。
見送る校長ディムはナイフをミハルに手渡す。
「そのナイフには『最高の魔導』が宿っている。
お前が一番分かっている筈。餞にくれてやる。
ワシの愛刀だったのだぞ」
ミハルは頭を下げた。
ククルを連れ、治癒の国『ディルガ』を目指す。
ガリソンの為、己の修行の為、
自身に怯えるククルの為に。
まずは、ハルス魔導学院の外界、
この砂漠の王国『ガラン』の王都『シャリシャ』へ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます