生前2
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人間に擬態するのは、とても疲れる。だから早く機械になってしまいたい。
幾億ものパターンを正確に記憶して、その時々でなんにも考えず、相手の求める正解だけをお出しできる機械になりたい。頭のよい人工知能になりたい。
自分が自分のままで、受け入れられる場所はどこにもない。そういった意味の居場所は存在しない。存在してほしくもない。
理解されるなんて、気味が悪いじゃないか。自分のことなんて、己自身ですらよくわからないし、定まってもいないのに、それを手取り足取り先回りされるなんて、不気味を通り越して不思議な奇跡だ。そんな都合のよい場所なんてあったら大変だ。
ひとり、ひとり、違ういきものだから、ひとり、ひとりと対峙するのには、たくさんのパターンを用意しなくちゃ。だから、パターンが増えると、切り替えなくてはいけないから、とても、疲れる。パターンは少ないほうがいい。だから、まわりには誰もいないほうが、疲れない。
寂しくても、いいよ。寂しくないほうが、ほんとうはいいけど。よっぽどいいんだ、寂しいほうが。しんしん耳に積もる静寂がいい。血液がきれいになる気がするから。
なんだよ、血液がきれいになるって。
ああ、ほんとうに、よくわからないな。
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