5話目

 頭の上から声が聞こえるイメージで。

「あ、起きたね?」

「もう~、ぐーーっすりだったよ。そんなに気持ちよかったのかニャ?」

「んー、別におねーさんは膝枕がなんて言ってないよー。猫ちゃんの方かもしれないじゃない」


「ふふふっ♪ でも、あなたがゆっくり眠れたのなら良かった」

「これにてお昼寝タイムは終了となります。ご利用ありがとうございました


 膝枕が終わり、少し離れた位置から声が聞こえるイメージ。

「一応夕方になったわけだけど……お夕飯のリクエストはある? もちろん食べていくんでしょ」


「リクエストが無かった場合、お夕飯は親戚の皆様方が持ち寄る予定オンリーになります。酒飲みが多いから、つまみが多くなるでしょう」

「私は採りたての野菜や生みたてのタマゴ、それからふっくらツヤツヤのお米を使った料理の方がいいわね~」

「お寿司や色んな御惣菜があるのはいいんだけど、ちょーっと和風寄りすぎのおせち料理っぽくなりがちなのよね」


「私的にはハンバーグやオムライスみたいな物があっても良いと思うんだけど。え? チョイスが子供っぽい? いいじゃない、美味しいんだから♪」


「さーて、夜になったら皆帰って来るだろうし。飲み物の準備でもしてあげようかなー?」


(遠くからお祭りで流れる祭囃子の音が聞こえてくる)


「どうかした?」

「お祭りの音って……。ああ~、今日は近くで夏祭りをやる日だったから祭囃子がここまで聞こえてきたのね」


「あのお祭りも私達が小さな頃から変わらずやってるわ。小さな神社を中心に、大きな規模じゃないけど出店がいくつも出て、地元の子供達や祭り好きが集まって――」

「夜になったら花火が上がる。アレが案外立派だったりするのよね、職人さん達が気合い入れて作ってるから」


「もしかしなくてもすごい行きたくなってきてたりして~?」

「いいじゃない、せっかくのお祭りなんだから少し行ってみるのも。きっとあなたを知ってる人もいるし、あなたが会った事がある人もたくさんいるわよ」


「あ~~~、お祭りの話しをしていたらおねーさんも行きたくなってきちゃった!」

「よーし、決めた。私も一緒に行くわ」

「どーせなら童心に帰ったつもりで行きましょう。その方が絶対楽しいもの」


「留守番はって? 大丈夫大丈夫、どーせ親戚の人達だってお祭りに行ってるし。少しぐらい誰もいなくたって、帰ってきた人は勝手にウチに入るから」

「元々家の鍵なんてあってかけてないようなものだしね。さすが田舎って感じ!」


「さあ、決まったのなら善は急げよ。会場は近いから車も自転車もいらないし、さくさく歩いて行きましょう」

「え? 乗物があるなら使うべきなんじゃって?」

「ふっふっふー、そこはほら。ゆっくり歩いて行く事に風情があるんじゃない」


「それともアレ? 便利な都会に慣れちゃって歩くのも億劫なぐらい衰えでもしちゃったのかな~」

「あはははっ、怒らない怒らない」

「そうねぇ、あえて理由があるとすれば……。そう、おねーさんがあなたと一緒に夜道を歩きたい、かな」


「ね、イイでしょ~?」

「うんうん、おねーさんはそう言ってくれるあなたが大好きよ♪」


「その調子で、出店を遊びまわる援助をしてくれるともっと好きになっちゃうかも」

「綿菓子、カキ氷、フランクフルトに焼きそばも食べたいわね。多めに買って、お夕飯のメニューに加えちゃおうかしら」


「さあ楽しくなってきたわ~」

「準備が出来たら出発よ。エスコートはお願いね♪」


(段々大きくなる祭囃子の音)


(打ち上げ花火が上がる音)

(打ち上げ花火が連続で上がる音)

(最後に、一際大きな打ち上げ花火が咲いた音がする)


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