【初投稿】わかめいし
ひろのふく
第1話 お父さんは死んだ?
「お父さんは死んでしまったんだよ」
枯れ葉になる未来を持つ葉っぱたちが、真っ赤に染まりゆく美しい秋口でした。
みらいちゃんには、その言葉の意味がよくわかりませんでした。
悲しい顔をしたお母さんの優しい声でした。真っ黒い服からは、会ったことのないおじいちゃんの話をするときのおばあちゃんの匂いがしました。
お母さんから、おばあちゃんの匂いがして、なんだかよくわからなくなってしまいました。
「お父さんはどこにいるの?」
「みらいはもう9歳なんだから、わかるでしょう。死んでしまったの。もうどこにもいないのよ」
「死ぬってなに? どうして死ぬの? 死んだらいなくなってしまうの?」
みらいちゃんだって、死ぬという言葉を知らないわけじゃありません。
人も生き物も、いつか死ぬ。頭ではわかっているのです。
それなのに、お父さんがいなくなってしまった理由が、よくわからないのです。死んでしまったと言われても納得出来ないのです。
「まったく、お父さんみたいなことを言うんだから……。ごめんね。お母さん、喪主だから行かないと」
「もしゅ?」
「あぁ、そうだ。みらいはまだ9歳だった。喪主っていうのは……」
お母さんは、喪主というのはお葬式をするときのリーダーだよ、と短く説明してくれました。
死んだ人はお葬式をしてお見送りする。お葬式をするにはいろんな準備が必要だ。
お葬式にはたくさんの人がやってくる。全部をまとめるリーダーが必要なんだ。
「わかるのに」と、みらいちゃんは小さくこぼします。
「わかるのに、わからない。どうしてお父さんは死んじゃったの?」
みらいちゃんのお父さんは、有名な哲学者です。
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