薄明の旋律
神和(しんわ)
第1話
空が青いわけではなく、僕たちの心が澄み渡っているわけでもなかった。ただ、曖昧な光の中で、僕たちはお互いに微笑み合っていた。空の下で感じる、単純な幸せと、深い感情が交錯するひとときを静かに楽しんでいた。
すべては、ただひとつの希望の影に過ぎなかった。僕たちの心は、淡い光を放つ桜の花びらのように、儚くも鮮やかに揺れていた。
「どうしてこんなに遠く感じるんだろう?」
彼女の言葉は、春の風に乗って僕の耳に届いた。僕はその言葉に答えることなく、ただただ彼女の背中を見つめていた。彼女の背中には、長い年月の中で積もった秘密が隠されているような気がした。
僕たちが高校に通い始めたころから、まるで運命が我々を引き裂くかのように、どこかで距離を作っていた。彼女の目の中に映る未来を、僕はすぐそばで見守っていた。だが、今、その未来がどうなるのかを知る術もなく、ただの片隅で静かに佇んでいた。
彼女が笑うと、その笑顔が僕の心を柔らかく撫でる一方で、同じ笑顔が僕に微かな痛みを与えていた。それが愛なのか、それともただの欲望なのか。僕たちの間には、確かに「何か」があった。しかし、その「何か」を形にする術が僕たちにはなかった。
季節が巡り、僕たちは変わっていった。しかし、心の奥底に眠るその「何か」は、いつしか暗闇に紛れてしまった。彼女が僕に話しかけるたびに、僕の心は揺れ動いたが、それがどうしてなのかはわからなかった。
ただ、ひとつだけ確かなことがあった。それは、僕たちが共に過ごしてきた時間が、僕の心の中で永遠に消えることはないということだ。今、その時間がもう一度僕たちを試そうとしている。
あれから月日が経ち、僕たちは再び交わる運命に引き寄せられた。彼女の瞳の奥に潜む真実と、僕の心の奥底に秘めた感情が、ついに交わる時が来たのかもしれない。
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