第5話その存在、キラキラのふわふわのよわよわにつき危険


さて、なんやかんやで狩猟の会当日である。

鱗の魔法は1日中発動させていても問題無いくらいに慣れた。発動させている場所は額から鼻先にかけてと両頬から首筋にかけて、後は手の甲から腕までだ。服装は男物の服に動きを阻害しない程度にフリルを沢山つけた私専用の服である。動くたびにフリルが軽やかに揺れて可愛いのでお気に入りだ。


お母さまとお姉さまは今回は見学のみの為ドレスで参加している。お姉さまには朝一番に「今日のルイーズは小さいドラゴンさんみたいで可愛らしいわ」と褒められた。今日も良い日である。


会場の確認で慌ただしくしていると周りを確認した義兄さまがこっそりと話しかけてきた。

「ナイショのお話ですの?」

「ああ。こんな形で頼む事になってしまうのは申し訳ないんだが、やっぱりどうしても頼みたくて。」

「任せてくださいまし!」

後でお姉さまに怒られなければ良いのだが。と思いつつ普段は私が振り回している方が圧倒的に多い義兄さまが頼ってくるのは珍しくて嬉しい。

「すまないな。実は今日、私の妹も狩猟の会について来るのだが妹は少し難しい立場にいてね。一言でいいから励ましてあげてほしいんだ。」


これは難しい事を頼まれてしまった。

「王女殿下にですか」

「ああ、難しい事を言っているのはわかっている。今日の会はもともと妹の息抜きに企画した事だったのだが直前でキャンベル公爵家にねじ込まれてしまって」


「ままなりませんわね」

「はあ、そうなんだよ。出来ればでかまわないから気にかけてくれると助かる。」

「わかりましたわ。」

話し終えた義兄さまは準備の為に立ち去った。


ライア王女殿下はあまり表舞台立たないと噂されている。いつも王太子殿下の影に隠れていると。怪しい匂いぷんぷんである。

王家の方とあまり関わるなと言われているんだけどなぁ。


まあ義兄さまの頼みだ。気に留めておこう。


先にキャンベル公爵家の馬車と王太子の馬車が到着する。キャンベル公爵家は公爵家夫妻、王太子の婚約者のマルティナ様の他に親戚の子供であろう男女の双子がついて来ていた。双子が王女と近い年齢なのはあからさまにアレであろう。


軽く自己紹介と挨拶を済ませ思い思いの場で王家の馬車が到着するまで談笑する。

キャンベル公爵家一行は私の姿を見て全員が眉をひそめた。まあ、そうなることは想定済みだ。


話しかけて来る人は居ないと思っていたが、以外にもキャンベル家当主に1人でいるところを話しかけられた。


「こんにちは、ルイーズちゃん」

「あら、これはこれはキャンベル公爵家ご当主様におきましてはご機嫌麗しゅう。」


「もう挨拶ができるのか、すごいねぇ」

「いえ、まだまだ研鑽の途中ですわ」

「いやいやご謙遜を。堂々とした立ち振る舞いに感嘆いたしました。ところでその出立ちは今日は狩猟に参加するのですか?」


「ええ、是非とも母直伝の狩猟を披露したいと思いまして。」


「それは楽しみですな。その頬の護りもご自身で?」

「ええ。時間はかかってしまいますが、怪我はしたくありませんので。」

「おや、そのご様子ですと結婚も良きところを考えているのでしょうか?結婚も職場もよりどりみどりで夢がありますなあ。今は憧れるものはあるのですか?」

「母にも父にも姉にも憧れるところがそれぞれありますわね。自慢になってしまい申し訳ないのですが、わたくしの家族は身近で手本になる存在と思っておりまして。」


「おや、それは素敵ですね」


そこまで喋ると王家の馬車が到着するとの事で出迎える準備の為逃げる事が出来た。最初からいろいろ飛ばし過ぎである。


王家の馬車群を整列して迎える。

両陛下、王太子、王女の順で降りて来る。両陛下と王太子に比べて王女は自信が無さそうだ。どうしたらあんな風なるのだろう?


付き添いのメイドに手を差し伸べられ降りてきた時には王女に見惚れてしまったが王女はスッと王妃の陰に隠れてしまった。

挨拶とお言葉の時にじっくり鑑賞させてもらおう。


他の王家の方の挨拶は耳に入ってこなかった。

王女殿下を観察しようと目を向けたがパチっと視線があった。王女は普通の人が表す嫌悪感を一切滲ませずに呟いた。


「キラキラだぁ」


いやいやいやいや、キラキラなのは王女殿下の方だと思うが。金糸のような髪はゆるく波打ち、瞳は晴れた空の色。どちらも王家の色である。そして、色の事だけでは無い天使と見まごう見た目。キラッキラのふわっふわである。

王太子の方が濃い瞳の色をして、王妃様が王女様を見る鋭い視線は気がかりだったが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る