第22話 ペドラとの決闘
そして次の日、闘技場は人ですっかり埋め尽くされていた。元々決闘の場は闘技場だったのだが、当日に押さえられていなかったから俺がしっかり押さえておいたのだ。
貴賓席には国王もいるらしいがどうでもいいか。開催委員とやらは教会なので俺が関わることもないだろう。
「じゃあルルナちゃん、そこで見ていてくれ。必ずペドラの奴をボコボコにしてやるから」
俺はルルナちゃんに白い歯を見せてサムズアップする。きっと俺の白い歯はキラリと光っていることだろう。
「はい、徹底的にやっちゃって下さい私達ロリペド族の受けた苦痛の一部でもいいんです。教えてやってください」
ルルナちゃんの呪いは俺がもう解いているが、同胞はまだだからな。どこにいるのかわからんから元を断つしかない。
ルルナちゃんも俺に期待してくれているのだろう。その真剣な眼差しは俺が奴をぶっ殺すことを期待しているはずだ。
「双方前へ!」
決闘を取り仕切る見届人が俺とペドラを呼ぶ。見届人に国王はわざわざこの国の聖騎士を送り込んで来たそうだ。ま、俺の見立てでは雑魚だな。あの程度で聖騎士か。
「じゃあ行ってくる」
俺は決闘の舞台に向き直り、歩きながら手を挙げる。どうよこの仕草は。カッコいいだろう?
俺が舞台に上がると同時にペドラも舞台に上がった。奴の死に装束は薄めの鉄で作り上げた軽鎧か。死に装束らしく白で決めてほしかったな。ま、いいけど。
「ペドラとジェノスよ。私はこのシェルカラング国聖騎士ユークリッド·フォン·ラズエルドである。此度の決闘の見届人だ。盟約に従い己の賭けるものを宣誓せよ」
そういやこの国の名前ってシェルカラングだったな。あんまり気にしたことなかったわ。そしれにしてもこの聖騎士。イケメンなのがムカつくな。
「俺は自分の持つスキルを全てを賭ける」
「俺が負ければロリペド族の奴隷紋を全て解呪しよう。そしてそこのルルナに土下座して謝罪しようじゃないか」
お互いが賭けるモノを口にする。聖騎士はこの2つを聞き顔をしかめた。
「あまりバランスが取れていないと思われるが、ジェノス殿はかまわんか?」
「かまわん。勝てばいい話だ」
「そうか。ではこの決闘の約束をお互いの支持する神に誓うという宣誓書に記入せよ」
神官が舞台に上がり、俺とペドラに羊皮紙を渡す。ギアスロールと呼ばれる神への宣誓書だ。これにサインをすると使徒がその決闘に敗れた際に強制的に執行されるらしい。
俺とペドラは用意された羊皮紙に署名すると見届人である聖騎士に渡した。
「宣誓書を確認した。ではお互い支持する神の下全力を尽くし給え」
そして見届人が俺達2人から離れる。会場は静まり返り、今か今かと開始の合図を待っているようだ。
「はじめ!」
そして開始の合図とともに俺は猛ダッシュでペドラとの距離を詰めた。得物は無く俺は素手だ。たっぷりと殴り殺してやるからな♪
めきょ……。
俺の右の鉄拳がヤツの顔面にめり込む。こいつ全く動かなかったが、反応できなかったのか?
俺はそのまま拳を振り抜く。ペドラはカクンと膝を落とした。いかん、このままだと気絶で終了だ。俺は素早く左手でヤツの顔面を掴み、倒れさせないことに成功する。
そしてそのまま上空に投げてやった。さぁたっぷり喰らってくれ。
「マジックアロー!」
初級魔法のマジックアローを放つ。その魔法の矢の数は圧倒的で、聖騎士も顔色を変えている。そして全矢をペドラに向けて放った。
ヤツの全身に矢が刺さり、貫き、撃ち抜く。うん、これだけで死んだな。全身蜂の巣だろこれ。しかしそれでは足りんのだよ。俺は上空に飛び上がり、穴だらけで絶命しているヤツの首根っこを押さえた。
「リザレクション!」
そして生き返らせる。さて、もう一回ぶっ殺してやるかな。身体を回転させペドラを闘技場の舞台に投げ落とした。そしてペドは全身を石床に打ちつける。
「死に曝せやぁ!」
俺はそのままペドラに向かって自然落下する。そして俺の膝がヤツの腹にめり込んだ。ペドラは盛大に血反吐を吐き出すとそのまま動かなくなった。
静まり返る会場。目を背けてる奴もいるが、大半は興奮して目を見開いているようだ。闘技場が娯楽になるくらいだ。惨殺ショーも庶民にゃ娯楽なんだろ。なんてったって中世ヨーロッパじゃ公開処刑は民衆の娯楽だった程だからな。
そして俺は絶命したであろうペドラの顔面を踏みつけ、グリグリする。
「なんだぁ? もうおねんねかゴルァ! てめぇの泣き叫ぶ姿が見れねぇじゃねぇかよ。リザレクション!」
俺はヤツの顔面を踏みつけたまま蘇生魔法を使う。するとペドラが吐血して息を吹き替えした。よし、これでもう一回ぶっ殺せるな。
「ま、待て! 勝負ありだ」
これからもう一回ぶっ殺そうと思っていたら見届人の待ったがかかる。まぁ2回死んでるだろうからな。しかし俺はやり足りんのだが?
「待て。今リザレクションでこいつを生き返らせた。回復もしたはずだから決着は着いてないだろ」
「もう既に2回も勝負はついた。お前の勝ちだ」
ちっ、バレてたか。殺すのは推奨されていないのか?
「ちっ、生き返らせた意味がなかったじゃねーか。もう一回殺させろ」
「ギアスロールがお前の勝ちを認めている。これを覆すことはできん」
聖騎士が俺の署名したギアスロールだったものを見せる。炎に焼かれ、一部だけが残ったようだ。
「勝った方のギアスロールは燃えて消え失せるわけか」
「そういうことだ。聖騎士ユークリッドの名において宣言する。この決闘の勝者はジェノスである!」
そして聖騎士が俺の勝利を宣誓する。会場からは一気に歓声が沸き起こり、拍手やジェノスコールが響いた。
「ううっ……、ひ、酷い目にあったぜ。だが生きているだけ儲けもんだ。一応礼は言っておくぜ」
そしてコールが止むとペドラはゆっくりと身体を起こす。さて、それじゃあ土下座タイムだな。
「ふん、ルルナちゃんに土下座で謝罪が待っているからな。先ずはロリペド族の奴隷紋を解呪してもらおう」
「あー、それなんだがな。お前俺を2回も殺してるだろ。最初に殺された時点で奴隷紋は消えてるよ。間違いない」
そういやこいつを殺したら解呪されるんだったな。なら後は土下座だ。
「ならルルナちゃんに土下座で謝罪をしてもらおうか。全裸でな」
「ぜ、全裸だとぉっ!? そんな約束はしていないから無効だ!」
「いいだろそのくらい。見届人、このくらいは認めてくれるよな?」
俺は見届人に話を振る。こいつが認めればありなんじゃね?
「ま、いいでしょう。片方はペドラ殿の意思に関係なく為されたわけですから。それに釣り合いも取れていませんでしたし」
いい返事だ。お前の名前を覚えてやろうじゃないか。確かユークリッドか。うん覚えたぞ。
「よし、見届人も認めたぞ。さぁ、全裸でルルナちゃんに土下座だ!」
「ぐあああっ! ちくしょう、聞いてねぇぞこんな話は……」
ペドラは涙目でガックリと項垂れるのであった。あー殺しそこねたわ。ちっ。
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