ジェノス、貴族になる
第21話 ペドラ襲来
領主をわからせた後、俺はドルーズのところにに寄った。
「旦那、無事で良かった。ルルナを助けてくれたんだな」
「当然だ、俺の嫁だからな。ペドラの奴とは決闘の話がついた。後は奴をぶっ殺せばロリペド族の呪いも解けるはずだ。ヤツ自身は金さえ積めば解いてやるとは言っていたが、生かしておく必要なんざないだろ」
「まぁ使徒様がどっちか生き残ってりゃ国王陛下も安心するだろうよ。この国は国家としては小さいからな。使徒様の存在が抑止力になってるんだよ」
「ほう、てことはあいつもそれなりに強いってことか。それは楽しみだ」
イキりまくって殺すのが楽しみで仕方ねーな。俺に比べれば雑魚のはず。鑑定とかはできね~がそうに決まっている。
「余裕ですね。まぁ、ベヒーモスどころか黒龍さえも倒したから旦那の方がきっと強いんでしょうよ。俺としても旦那が生き残ってくれた方が嬉しい」
「そう言ってくれると嬉しいな。んじゃ王都に行ってくる。ルルナも連れて行くがいいよな?」
まぁ元より負けるつもりもないがな。それより俺の勇姿をルルナちゃんに見てもらうことが重要なのだ。
「もちろんですよ。頑張ってください」
「ああ、そんじゃあな。色々世話になった」
よし、許可はもらった。これで何の問題もないな。ドルーズは俺の味方だから筋は通すぜ?
「マスター、色々ありがとうございました。これからはジェノス様と一緒に生きていきます」
「おう、ルルナ。幸せにな」
ドルーズはニカッといい笑顔を見せて親指を立てる。ルルナちゃんも俺と生きていく決意を固めてくれた。これで後はペドラをぶっ殺すだけだな。
そして俺とルルナちゃんは王都に向かうのだった。長距離は歩かせらんねーからな。俺の飛行魔法でひとっ飛びさ。
* * *
王都に着き、宿を確保した後は一度ギルドへ寄ることにした。ルルナちゃんはお買い物だ。小遣いを渡そうとしたら「私ジェノスさんからたくさんもらったので大丈夫です」と断られてしまった。なんていい子なんだルルナちゃん。
「この辺で強そうな魔物のいるところはないか? ベヒーモス程度でかまわんのだが」
俺が良く狩りをしていた森は王都から遠いからな。飛行魔法を使っても時間がかかりすぎる。それにせっかくだし色んなモンスターを狩ってみたいのだ。
「あの、ジェノス様。教会の方から伝言を承っております。至急教会に来て欲しいとのことでした」
「教会が? 何の用だよ」
決闘の日にちは決まってんだろ。今更なんの用があるっつーねん。
「すいません。答えてくれませんでした」
「めんどくせーな。決闘のときに聞くからいいわ」
どうせたいしたことないだろ。わざわざ出向くのも面倒だ。
「え、無視するんですか? ていうか決闘というのはなんでしょう?」
「ん? 俺は邪神イヴェルの使徒なんだよ。だからペドラと決闘をすることになってるんだが」
「初耳です。それなら大々的に告知されるはずなんですが」
ほほう、大々的に告知されるのか。だったら俺も宣伝くらいは手伝ってやってもいいな。ギャラリーが多い方が燃えるってもんだ。
「そうなのか。じゃあ大々的に告知してくれ。そうか、きっと俺への用事は宣伝を手伝ってほしいに違いない。よし、俺が全力で告知してやろう」
「どうするんですか?」
「ここはギルドだろ? 俺が宣伝の依頼を出すのさ。1人1日金貨1枚払ってやろう。定員は無制限だ。4日分で100人を想定して金貨400枚支払おう。足りなかったら請求回してくれ」
この世界じゃ宣伝は人海戦術だろ。識字率とかわからんからビラに頼るのは良くない。とにかく多くの人に口コミと宣伝をしてもらうべきだろう。
俺はアイテムボックスから金貨400枚を取り出し受け付け嬢に渡した。するとその話を聞いていた冒険者達が集まり俺に声をかける。
「おい、その話は本当か? そんなうまい話なら俺はやるぞ!」
「俺もだ!」
「4日間毎日で金貨4枚かよ。そんなボロい依頼受けなきゃ損だろ」
冒険者達が集まりこぞって依頼を受けると言ってくれた。よし、これなら多くの人が集まるに違いない。
「よっしゃ歓迎するぜ! 人数は無制限だからな。どしどし依頼を受けてくれ」
そして実に多くの冒険者が宣伝をしてくれることになった。街で大々的に宣伝が行われ、王都はこの話で持ち切りだ。なんでも国王とやらも来るらしいぞ。
そして決闘の3日前のことだ。俺の泊まっている宿屋にペドラと神官が押しかけてきた。
「おい貴様、いったいどういうつもりだゴルァッ!?」
「そっちこそいきなり押しかけてきてどういうつもりだ?」
なんかペドラのヤツめちゃくちゃ怒っているし、神官共の顔は青い。俺なんかやっちゃいました?
「何の話だよ。わけわからんぞ」
「決闘を大々的に告知しやがっただろうが!? 国王陛下まで見に来ると使者まで寄越してきたんだぞ!? おかげで決闘中止にできねぇだろうが!!」
ペドラの奴がまくし立てるが、決闘中止って聞こえたな。
「おい、決闘中止ってどういうことだ。聞いてねぇぞ」
「だからそれを伝えるためにギルドに言伝を頼んだんだよ! 完全に無視してただろうが」
おうおう、ペドラの奴顔真っ赤にしてなんなんだよ。知らんがな。
「いや、なんで中止にするんだよ。中止とか認めねーぞ絶対に」
「ふざけんな! 黒龍を倒すような奴と決闘なんざやっとれんわ! 勝てる気しねぇんだよ。ロリペド族の呪いは解いてやるから中止にしてくれ!」
「やだね。お前が死ねば呪いは解けるんだから中止にするメリットがねえな」
折角国王まで見に来るんだぞ。惨殺ショーを楽しみにしてるに違いない。
「頼む、この通りだ!」
ペドラの奴土下座しやがった。よっぽど死にたくないらしい。
「足りない頭でよーく考えろ。立場が逆だったらお前中止受け入れるのか? 受け入れるわけねーよな」
「ぐっ……!」
俺の言い放った言葉にペドラは言葉に詰まったようだ。
「そもそも。使徒同士は最後の1人になるまで殺し合うもんなんだろ? 俺はそう聞いているんだが」
少なくともイヴェルからはそう聞いているんだがやはり違うのか。じゃあこの戦いの意味はなんなんだよ。
「んなわけねーだろ! 使徒は死んでもいずれ補充されるんだよ。永遠に終わらねーだろうが。決闘だから殺すこともあるが、片方が負けを認めればそれで終わるんだよ」
「本当か? 邪神イヴェルに聞いた話と違うぞ。じゃあスキル全部寄越せってのはなんだったんだ?」
そういやこいつ、最初俺に勝てると思って完全に殺すつもりだったよな。なんてふざけた野郎だ。
「あ、あれは俺が勝つと思ってたからであってその、な?」
ペドラが言い淀む。やはりそんなところだろうな。このままだとこいつ帰らないだろうし、逃げられでもしたら面倒だ。とりあえず話を合わせておくか。
「仕方ねーな。じゃあ殺さないでおいてやるよ。スキルもいらん。その代わりロリペド族の呪いは解いてもらうし、ルルナちゃんに土下座で謝罪しろ。それで手を打ってやる」
まぁ、一応最低限度このくらいはしてもらわんとな。生き残った場合の話だが。
「ほ、本当か!? 一応観客もいるから少しだけ戦って俺は降参する。それでいこう」
「わかった。一分くらい戦えばいいんじゃないか?」
プライドも何もないらしい。ま、一分あればぶっ殺せるだろ。この程度で死ぬとは思わなかったとか言っておけばいいんじゃね?
「そ、そうだな。一分ほど戦って俺は降参するから。た、頼んだぞ?」
「おうわかった。じゃあな」
「よ、よし。じゃあ明日はくれぐれも頼んだからな?」
「わかったわかった」
俺は手をひらひらさせ、さっさと奴等を部屋から追い出す。あー、明日が楽しみだぜ。
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