第16話 黒龍相手にイキれ!

「そこをどけ小さき者よ。まだ死にたくはないだろう?」


 いやー、なんか強そうな魔物探してたらたまたま黒い龍を見つけたから立ち塞がってみた。こいつの前に立ち塞がるためにわざわざ飛翔魔法と探知魔法を創造技巧で取得したが、使える魔法だし別にいいか。こいつを倒せば結構ポイント入りそうだしな。


「あ? 俺に言ってんのか。つか邪魔なら力づくで退かせばいいだろ。それをしないのはなんでだよ」

「人間にしてはやるようだからな。少し温情をかけてやったまで」


 黒龍は翼をはためかせながらほざく。


「それよりお前喋るんだな。喋るドラゴンって初めて見たわ」

「妾は龍である。そのへんの竜と一緒にされては困る」


 読み方おんなじじゃねーか。どっちもドラゴンだしよ。紛らわしいんじゃ!


「ふーん。おんなじトカゲだと思ってたわ。でも確かにこっちのドラゴンは翼を生やしていなかったな」

「それが大きな違いだな。龍と竜では存在そのものが違う。一緒にされては困ると言った」


 トカゲ呼ばわりを軽くかわすか。これはあれだな。ゴミに何を言われても気にする価値無しというやつか。ま、どっちでもいいが俺は八つ当たりに来たんだ。きっちり八つ当たりさせてもらおう。


「そうか。ところでお前この先の街を襲うつもりなんだよな?」

「いかにも。妾の子を攫い、殺した人間には報いを与えねばならん。そのせいで大勢の人間が死ぬが、見せしめくらいにはなるだろう。わかったならどけ。死にたくはないだろう?」


 なに上から目線で話してんだこの黒トカゲが。あー苛つくわ。もうさっさと蹂躙して殺そう。


「は? 俺に言ってんのかよトカゲ風情が。てめぇが街を襲うってんでこっちも苛ついてんだよ。ガキの待ってるあの世に送ってやるから感謝しやがれ!」

「身の程知らずが……。そんなに死にたいなら叶えてやろう!」


 黒龍が大きな口を開ける。ブレスを吐く気だな。悪いが事前準備くらいはしてあるんだよ。創造技巧でかなりポイント使っちまったがこいつを殺せば補填されるだろ。


神霊の盾ディバインシールド

「死ぬがいい。腐敗の吐息ロトンブレス!」


 黒龍の黒い咆哮が俺の神霊の盾ディバインシールドに激突する。なかなかの威力なのかもしれんが、俺の防御魔法を突き破る程ではないようだな。


「その程度か?」

「ほう、これを防ぐか」


 ブレスを防ぎ切り、俺はニヤリとほくそ笑む。しかし黒龍にも余裕があるようだな。全力じゃなかったってことか。本気を出させねーとつまらんな。


「本気でやれよ。でないと死ぬぞ? 本気出しても死ぬだろうけどな」

「いちいち癇に障る奴だ。いいだろう黒龍という存在の恐ろしさ、思い知らせてくれるわ!」


 黒龍の周りを黒い魔力が覆い始める。なるほど、これが危険等級特級というやつか。確かにベヒーモス程度とじゃ比べるべくもないな。


「死ねい!」


 黒龍が吼え、一気に間合いを詰める。どうやら物理攻撃で仕留めるつもりか。確かに体重差は歴然だ。受け止めれば吹っ飛ばされるのは俺の方だろう。


 ミスリルの剣でどこまでやるかな?

 俺は黒龍の爪の一撃を躱すと懐に潜り込み、奴の腹に剣を突き立てた。ミスリルの剣は魔力を通せるからな。柔らかい腹ならなんとかなるかもしれん。


 目論見通り俺の剣は黒龍の腹に根本まで刺さる。問題は黒龍がデカ過ぎて内臓機能への損傷が期待できないことか。


「ちょこまかと!」

「これでも食らっとけ。貫通光線ペネトレーションビーム!」


 黒龍は腹にまとわりつく俺を振り解こうとするが、俺の方が早い。ミスリルの剣を介して数十本分の貫通光線ペネトレーションビームを束ね、極太のビームを放ちながら剣を振るった。


「グワァァァアッッ!」


 ビームは奴の腹を掻っ捌いて大きな傷をつける。黒龍は絶叫をあげ腹から大量の血を吹き出した。加減はしたからまだ致命傷にはなってないだろう。


「クハハハハ! この雑魚がぁっ、たかだかトカゲ風情がこの俺に喧嘩を売るとは身の程を知れよ!」

「き、貴様ぁぁっ!」


 うっひょーーっ! 

 黒龍相手にイキるのぎんもぢいいいいいっっっ!!

 俺は昂る嗜虐心を押さえきれず、もっともっと黒龍を痛めつけたくなった。


「ぎゃひひひひ! テメーはウジだゴキブリだぁぁぁっっ!! 身体の中から清めてやるぜっ!」


 俺は更に腹を斬りつける。そしてアイテムボックスから塩5キロを取り出して傷口にぶちこんでやった。さぁ、よく擦り込みましょうねぇっ!


「グオオオオオッァ!?」


 どうだ傷口に塩を擦り込まれた気分は?

 もっとだ、もっと苦しんで俺を楽しませろ!

 このためだけに手に入れた暗黒魔法を使ってやるから泣き喚けや。


苦痛ペイン!」


 これは今受けている苦痛を倍増させる邪法だ。相手を苦しめるには非常に使える魔法だよなぁ。


「~~~~~~~!!!」


 黒龍は声にならない叫びをあげて地上へ真っ逆さまに落ちて行く。あちゃ、このまま地面に激突したら死んでまうな。それじゃ痛めつけられないじゃんか!


 俺は落下していく黒龍を追う。そして激突から守るために下に回り込むと魔法を放った。


「マジックミサイル!」


 俺は大量の魔法の矢を下からぶつけ、落下の速度を減速させる。それでも元が大きいせいかあまり効果はなかったようだ。黒龍は地面に激突すると土砂を吹き上げる。うーん、土煙でよく見えん。


 土煙が止むと、平原には大きなクレーターができていた。黒龍はピクピクと痙攣している。まだ生きているのか。じゃあ目が覚めたら殺すかな。


「グウウウッッ……」

「よう、目が覚めたか?」

「わ、妾は負けたのか……。人間ごときに負けるとはな……」

「ねぇねぇ、今どんな気持ち? ゴミ扱いした人間ごときにボコボコにされて悔ちいでちゅか~~、ギャハハハ!」


 俺は精一杯黒龍を煽る。さぁ無様な負け犬の遠吠えを聞かせてくれよ。


「いや、負けたのはお前の方が強かったからだ。妾の負けだ、さぁ殺すがいい」

「なんだよ、命乞いしないのか?」


 なんだよつまんねぇな。カッコつけんな弱いくせによぉ。


「妾は今まで命乞いして来た者を許したことはない。そんな妾に命乞いをする資格はないのだ」

「あっそう。つまんねぇな、じゃあ死ねよ」


 俺は黒龍の口の中に貫通光線ペネトレーションビームを放ちとどめを刺した。結果的には余裕でぶっ殺しているんだが、ミスリルの魔力剣はもう使い物にならんかもしれんな。刃がボロボロになっちまったぞ。


 うーん、やっぱり俺にふさわしい剣が欲しいとこだな。あーあ、せめてゲームのアイテム全部もってこれてたらなぁ。


 俺はとりあえず黒龍の遺体をアイテムボックスに収納する。こいつを素材に武器とか作れんかな……。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る