れいんれいん

菫野

れいんれいん

「方舟ののりばは恋の東です」「サンダルのまま行けるでせうか」


ますぐに立つ黒猫見たりわれと眼を合はせはざまに消えてゆきたり


雨滴ならあなためがけて落ちてゆく爪に睫毛に金のまなこに


ソーダ味の月をのみこむ胃の中ではじけるあひだわたしは青い


フィロソフィストの爪磨きほどいとほしい自転する星、めがねやのめがね


「灯台のやうにあかるい時計屋に天使がゐたよ」云はれてそして


なにごともなかつたやうな顔をして死後の家路をたどつて行けり


冷蔵庫あければ栞いちまいが遺品のやうに忘られてゐる


れいんれいん鳴きながら降る雨にもう九十年ほど出会つてゐない


水色の本を蒐めた図書館のみづいろの司書にいつかなりたし

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れいんれいん 菫野 @ayagonmail

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