〈Novels.〉Good bye myself.
Dark Charries.
Third of Hearts : Good bye myself...ver.
Episode.1... Time to say goodbye, myself.
ああ、僕のオリオン……。
オリオンを背にして、サザンクロスを見たかったと嘆く僕と亜紀―――。
空には一筋の閃光と点状の灯りが灯っている。夜空は、満天の明星達がうっすらと光っていて、僕らの瞳に白く映る。僕の全てを星の光によって純白に染めてくれたら、僕はもっと亜紀の中にある心の闇がはっきりと見えるかもしれない。
届け、星の中に閉じ込めようと願った、僕の心のスケア。僕は水筒のキャップを開ける。何か失われたものを探そうと努力するように。失われたのは、僕の誠意だろうか、それとも、僕の抜け殻の中に未だ探そうとしている意思だろうか―――?
僕は心が一人ぼっちになる。
あの時の暑い夏、体育館倉庫に残った溶けていく氷を見て、僕は、亜紀と二人影になる場所で、亜紀の驚いた顔の隣で片腕を突く、という妄想をした。
現実にはできない。そんな意思がないというか、そういうことってもっと後で好きにやってもいいんじゃない、だなんて、思ったわけでもなく。
ただ―――彼女だけが全てだなんて考えてしまっている自分が何か空しく感じてきたからだ。単純に疲れてしまった。僕の色んな想いがボウルに注がれたコップ一杯くらいの想いが、油と水のように混ざり合い、息をつく間もなくあふれ出てくる思考に迷ってしまって、心の器がギシギシと音を立てて心の中の想いがあふれ出てくるから―――。
僕の心の中の世界。心の中に宇宙があるだなんて暗い闇に閉じ込められて孤独感が溢れて残酷だけど、宇宙の内側には一等星が輝いていて、それが流れ星として墜ちてきて僕らを闇で包むのが不安だったから、きっと君は傍に居てくれるのだろうと思った。
自転車で走る僕の籠には、水筒を持ってきた。熱い水筒の中身はレモングラスで香りづけしたアップルティーがそこにあって。心と身体の両方の器を、そこに刺さったジグザグに尖った人の発言が深く刺さった。僕の身体に刺さったささくれをこの飲み物がどうこうしてくれるわけではないが、ただ、亜紀といるときだけは忘れさせてくれる。同じ目線で語ってくれる人を探していたけど、そういう人って中々いなかった。どんどん身体が壊れていくような感触がしたと思うと、それは多分人と関わることに疲れてきてしまったせいだと思う。自分で勝手に悩んで、行き過ぎた発言が空回りしてしまって、そういうことを繰り返してしまう中で、土砂降りの雨が降った中一人ポツンと孤立無援で立ち尽くしたような状態を想像してほしい。
そういう思いにふと囚われる瞬間ってどこかないだろうか。
その思いに縛られて一人部屋に閉じこもっているときに亜紀からLINEが来た。
外で星見に行かない?―――多分星と繋がりたい気分になったんだと思う、蔵人とも、繋がっていたい。
僕はそれを見るなり、すぐに準備した。準備の時間が息苦しいくらいに急いだ。色々考えた結果、僕の自転車で近くの空を眺めることにした。亜紀との待ち合わせも、スマホ見る余裕もなく、やってきた。
―――彼女とはリズムが合っている。
山とかいく気分だったけど、蔵人、どうかしたの?そんなにはしゃいじゃって、おかしい。と笑っていた。
亜紀を乗せて僕は、走っていた。
どこまでも、生きていきたいから。
相棒の彼女を連れて、どこへでも。
猫が空虚の心を押し戻すようにけたたましく鳴いて、僕は彼女の訴える声に気づく。
『ねえ、このまま心を失わないで、お願いだから』
『僕が僕で生きられる根拠はいつになっても無いから―――』
『でも蔵人はどこでも蔵人らしくいたよ。映画を見たり、修学旅行に行ったりしたあの時のみんなと一緒にいた夜も蔵人はたぶん、原石のようにくすんではいなかった。淡く心細い心の中蔵人は蔵人らしくいられたはず』
『でも僕の頭の上には人形のように紐でつながれたマリオネットのような感触が抜けない。心を操られているようで悪魔に』
『蔵人、今すぐその位置から解き放って。あなたはまだ光っているべきだから。心の底から一緒にいてくれて感謝しているの、だから、そこから抜け出して。悪魔に魂を売るんじゃなくって―――いっそ私と抜け出したいね』
二人の心の鼓動が重なった。
お互いそう思った瞬間、何かが弾けた。ガラスに落ちたビー玉のように何かがけたたましい音とともにはじけ飛んだ感触を僕は覚えた。
全てはガラクタのように空虚であっても。
風車が回り続けるように僕らの世界はそこにあって。
―――亜紀はいつも友達のようにくすっと笑っていて、僕を少年にさせる。
僕の中で無数の種が育っていって、笑いあえるくらいのフィールドが欲しい。
いっそすべての悪を打ち払えるほどの、強大な正義が欲しくって。
僕はあちこちを彷徨い続け、惑う。
―――狂おしいほどに、命を感じながら、すべてが嫌になるほどの劣等感を覚えながら、このアンダーグラウンドを迷走していて。それがもどかしくなるほど辛くって、自分が愛おしいと血脈を感じ、僕は僕の行く末だって、誰といつも過ごすのか、とか、何かを選択するには何かを捨てなくちゃいけない行為に、乏しいアイデアしかもっていないのではないか、とか根拠がない、とか色々証拠も根拠もないことで悩んでいて、それを教えるのが亜紀だった。でも、亜紀だってすべてを知っているわけではないから。
それが僕の心に引っ掛かっているジレンマ。僕が僕で居られる理由は僕が真剣に人生を決めているから。僕が僕らしい、と亜紀には映っていた、と見ていてくれるのが嬉しいとまでは思わなかった。そう感じている暇もないくらい自分のことで忙しかったからだった。
また、アップルティーにシナモンを入れてしまったな、と反省。彼女は嫌いだったのに。
「蔵人らしいね」
「それ、どういう意味?」
「多分、もう自分のことは自分で決めなくちゃ、って焦ってる」
「当たり」
「いいよ、そんな蔵人も」
「そう言ってくれるなら僕は君にしておくよ、君と毎日過ごしたいな」
「付き合うって意味だったら、まだ探さなくちゃいけない。男の子も山ほどいるしね」
「そんなに何を焦っているの?」
「……本当の幸せって何だろうね」亜紀は言った。
「形の中になさそうだよね」
「……そうだと断定するには早くないかな?蔵人君」そう言って亜紀はなでた。
これが僕らの世界。
紹介するには遅すぎるくらい仲が良いけど、初めからそうだったというわけじゃない。時には喧嘩もあっただろう、とは思うけど、いつしたのか、いつから仲良くなったのか、もう僕の頭の中には覚えておけるほど余裕がなくって。
すべてを海の底に置いてきてしまったように、僕の人生はずっと一つの大きな船に乗っかって進んでいる。コースを見失わないようにすればするほどすべての根拠は永久に増えていくばかりで、人ってなんだろうか、とか関係のないことばっかりループして日常があっという間に進んでいってしまって、世の中ってそうだよね、と分かったふりして、それが当たり前だ、という価値観に縛られるのが嫌で。
時々外へ出るのもそれが原因だった。そんな想いに縛られる価値観が嫌いで、箱庭だなんて気取った言い方で束縛を決めつけるのはどうかしていると思う。
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