少女と理由
紙の妖精さん
ノート
沙紀は、恥ずかしそうに頬を赤らめながら、彼女の膝の上にあるノートを見つめて言った。
「そのノート、かわいいですね。」
伊井田さゆりは少し驚いたように目を見開いたが、すぐに微笑んで答えた。
「私のノート、かわいいですか?なんか嬉しいです。ありがとうございます。」
沙紀は興味津々に身を乗り出して、ノートを指さしながら言った。
「どこで売ってるんですか?なんか欲しいな、そのノート。」
伊井田さゆりは持っていたペンをくるくると回しながら、考えるように視線を空中に漂わせてから言った。
「学校の購買部に売ってます。でも今は夏休みなので、買えないと思います。」
沙紀は少し肩を落としながら言った。
「残念。いくらぐらいなんだろう?」
伊井田さゆりは肩をすくめ、少し申し訳なさそうに答えた。
「税込みで600円ぐらいだと思います。」
沙紀はノートをじっと見つめながら、小さく頷いた。
「安いかもしれない。ブランドものだったらもっと高いのかな?」
伊井田さゆりはわずかに首を傾げ、声を落として答えた。
「私もよくわからないです。すみません。」
沙紀は自分の学校について思い出したように視線を上げ、質問した。
「この辺りの学校って、私の学校の近くに小学校があると思うんだけど。」
伊井田さゆりは頷いて、目を沙紀の方に向けた。
「はい、私は小学生です。この近くの中学校に近い小学校に通ってます。」
沙紀は少し驚いたように、でも嬉しそうに微笑んで言った。
「名前は何て言うの?」
伊井田さゆりは少しだけ照れくさそうに、しかししっかりとした声で答えた。
「伊井田と言います。伊井田さゆり。」
沙紀はにっこりと笑って、自分の名前を名乗った。
「私は沙紀。門倉沙紀って言います。」
伊井田さゆりは笑顔で、沙紀の顔をじっと見つめながら尋ねた。
「沙紀さんは中学校の何年生ですか?」
沙紀は少し視線を落としながら、小さなため息をついて答えた。
「中学1年です。学校ではあんまり友達ができなくて、いつもぼっちなんですよ。」
伊井田さゆりは共感するように頷き、少し寂しそうに笑った。
「私も似たような感じです。小学校ってあんまり人間関係がおもちゃみたいで、みんな真面目に関わろうとしないし。」
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