第3話 エプコットセンター 修正版

※この小説は「フロリダへ行こう」の修正版です。実は、パソコンの操作ミスで編集中に保存できなくなり、新しいページで再開した次第です。文言や表現を一部修正しております。もう一度読み直していただければと思います。


トラベル小説


 夜2時近くに寝たので、起きたのは8時過ぎだった。4人ともボーッとしている。でも、時差ボケ解消のためにも朝食をとろうということで、ホテルのビュッフェに行ってみる。棚から取り出して最後に会計をするシステムだ。このあたりがコスパ重視のカジュアルホテルだと思った。調理をするシェフは一人も見えない。電子レンジがあるので、あったかい物が食べたい人はそこでチンをするのであろう。コーヒーは煮詰まっていて、とてもおいしいとは言い難い。結局、サラダとパンとコーヒー(子どもはジュース)だけとなった。

 そこで、妻のリクエストで日本料理店があるエプコットセンターに行こうということになった。ホテルからのシャトルバスに乗り込んで、エプコットセンターに向かう。ディズニーワールドは東京の山の手線内の2倍ぐらいの広さがあるので、泊まっているホテルからは結構時間がかかる。いくつかのホテルやパークを経由して、1時間ほどでエプコットセンターに着いた。ここはディズニーワールドができた時からあるパークで、いわば中心的存在である。銀色に光った球体のシンボルが入り口にそびえたっている。ここもアトラクションである。最初に、人気のソアリンの予約をとった。各所に予約ブースがあって、空き時間が示されている。すると夜6時に空きがあった。ちょうど夕食時なので空いていたのだろう。時間を設定して例のリストバンドをセンサーに近づけてOKである。人気のあるアトラクションなので、予約すると特別料金がかかる。

 そうしているうちに昼近くになり、エプコットセンターの一番奥にある日本の料理店がやっている鉄板焼きの店に行くことにした。他にもうどん店があったが、おなかがすいていたので、しっかりと食べたかった。

 もう一組のファミリーといっしょに8人がけのテーブルに座る。そこに日本人のコックさんがやってきて、カチャカチャとヘラをたたいて、器用に焼いていく。海鮮や肉がいい香りを奏でている。コックさんの軽妙なトークもおもしろい。英語と日本語のバイリンガルだ。子どもたちも興味深々だ。小皿に盛りつけられた食べ物もとてもおいしかった。

 半分ほど食べ終わったところで、2つ離れたテーブルに新しいお客さんが案内されてきた。すると娘の祐実が

「アイちゃんだー!」

 と叫ぶ。皆がそっちを向く。たしかにアイちゃんファミリーだ。向こうも気がついて、近くにきたアイちゃんパパが

「半年ぶりですね。食べ終わったらごいっしょしましょう」

 と言ったので、アイちゃんファミリーが食べ終わるまでロビーで待つことにした。

 30分ほど待つと、アイちゃんファミリーが出てきた。

 祐実とアイちゃんはすごく楽しそうだ。圭祐もまんざらではない。アイちゃんがかわいいからだろう。

 2家族でワールドショーケースを見てまわった。ここは比較的すいている。ノルウェー館のボートには興奮していた。アナ雪の世界である。出てからアイちゃんパパにいろいろ聞いてみる。

「よくこの時期に休みがとれましたね」

「えー、夏に帰国が決まったので、その前に家族サービスと思いまして・・帰国したら1週間の休みがとれませんからね」

「さすが、T社の営業マン」

「そちらこそ、H社の工場経営で辣腕をふるっていたじゃないですか」

「お互いさまですよ。われら日本の自動車メーカーが日本の産業をささえているといっても過言じゃないですよね」

「さすが・・・経営側にたつ人は違う。将来の工場長、いや社長かな?」

「そんなことはないですよ。今は新規事業に向けて四苦八苦しています」

「いいんですか、ライバル企業にそんなこと言って・・?」

「それぐらいは誰でも知っていることです」

「そうですけど・・いつ来られたんですか?」

「昨日の飛行機です。格安航空券なので19時間かかりました。少し時差ボケです」

「日本から来ると時間に逆行しますからね。私たちは明日の飛行機で帰ります」

「ヨーロッパだと直行便があるから楽ですね」

「そうですね。それにしてもここで会えるとは思いもよりませんでした。来られることを妻は知っていたみたいですが、まさか鉄板焼きの店でいっしょになるとは・・」

「そうですね。奇跡かもしれませんね」

「アイにとっては、いい思い出になります。日本に帰ったら、また会いましょう。おっと、入れ違いで海外勤務かな?」

 と、こちらの動きをさぐる言葉で終わった。海外事業部の仕事を他社にもらすわけにはいかない。

 ソアリンの予約時間に近くなったので、アイちゃんファミリーと別れた。娘どうしはハグしあって別れをおしんでいる。圭祐はアイちゃんに握手を求められ、照れながらも喜んでいる。女の子と握手したのを初めて見た。妻に

「アイちゃんママと連絡をとりあっていたのか?」

 と聞くと、

「うん、今日までいるとは聞いていたわ。でも、エプコットで会うとは思っていなかったわ。アイちゃんと祐実の思いが引き合わせたのかもしれないね」

 という返事だったが、わが家が初日で昼食に鉄板焼きを食べにくるとアイちゃんママが予想して、それがぴったしはまったということらしい。

 ソアリンは想像以上に楽しかった。感覚的にはほぼ360度スクリーンで、自分が空を飛んでいるみたいだった。子どもたちも歓声をあげている。東京DSにもソアリンがあり、映像が違うという。それなら行ってみたいと思うアトラクションだった。

 ソアリンを出ると、人がレイクの周りに集まっている。アイちゃんママから

「夜のショーは必見よ。日本と迫力が違うから」

 と言われていたので、レイクサイドに陣取った。

 花火が上がり、ショーの開幕。湖面に花火が反射してきれいだ。すると水のスクリーンがでてきた。そこにディズニーのキャラクターが出てきたり、アニメの名シーンが映される。マーメイドのたこの化け物が出てきた時は、本物かと思うぐらいの迫力だ。祐実はママに抱きついている。レーザー光線や花火が一面に拡がり、30分でショーは終わり。

「フー」

 と思わずため息をついてしまった。こんなに激しい夜のショーは見たことがない。これが毎日開催されているとなると入場料が高いのも納得だ。今回は3日間チケットなので割引になっているが、1日券だと一人1万円を越えてしまう。でも、子どもたちの喜んでいる顔を見ると、そんなことは忘れてしまう。ふだんは寝顔しか見られないのに、子どもたちのいろいろな表情を見られるのは親として最上の喜びかもしれない。

 最後にバスで1時間ゆられてホテルに帰ることさえなければ、最高の一日だったかもしれない。

 これにて2日目終了。

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