第5話 ブリュッセル 修正版
※この小説は「ベルギー城めぐり」の修正版です。実は、パソコンの操作ミスで編集中に保存できなくなり、新しいページで再開した次第です。文言や表現を一部修正しております。もう一度読み直していただければと思います。
トラベル小説
入国5日目、6月21日。まずはガースベーク城に行く。ブリュッセルの城郭を除けば一番近い城である。駐車場からポプラが並んでいる並木道を5分ほど歩くと、やっと城が見えてきた。城門までは10分ほど歩かなければならず、結構広い敷地だ。城門の左右には狭間がある円形の尖塔があり、中央にはより高い重厚な造りのタワーがある。上から弓矢で狙われたらイチコロだ。
この城は13世紀に建てられたもので、今は国立博物館となっている。広大な敷地で市民のかっこうの散策地となっている。内部見学はオーディオガイドで説明を聞く。博物館なので、城のたたずまいはあまり感じない。豪華な貴族の館という感じだ。それよりは、外に出てからの方が驚いた。40haもある敷地は見渡す限り城という感じだ。城壁の向こうは見えないぐらい遠い。大きな池があったり、20頭は入るという馬小屋には驚いた。これだけの広さの城がベルギーにあるとは思っていなかった。ところが上には上があった。
午後はフランス国境近くのベロイ城に行った。ここは貴族の館で、当主が現在も住んでいる。敷地の広さはなんと120ha。どこまで続くかわからない広さだ。中に入ると非居住区域が公開されているし、博物館スペースではテーマにそった物が展示されている。行った時は「音楽」がテーマで、古い蓄音機や珍しいピアノ・オルゴールが展示されていた。外の移動は観光地で見られるトロッコ自動車だ。モナコのF1コースを走ったミニトレインと同じ型の物がお城と駐車場を往復している。それに乗らないと30分近く歩かなければならない。とんでもない広さだ。
夕方にブリュッセルにもどり、ヘーゼル宮へ行った。王宮の別宮なのだが、現在は国王がここに住んでいる。大きな植物園があり、土日は一般に公開されている。
そして市内中央部にある王宮に行った。王宮の前の広い道路にクルマを停めて写真を撮っていたら、パトカーが近寄ってきた。
「 Move ! 」(動け!)
と一言。逆らうと捕まりそうなので、すぐにクルマを動かした。駐停車禁止の標識はなかったと思うのだが、やはり王宮前だからだろうか。
市内の中央駅近くの地下駐車場にクルマを停めてグランプラスに行く。ここの夜景を木村くんにぜひ見せたかったのだ。ヨーロッパでもっともきれいな広場だと言われるグランプラスは、それほど大きくはないが、周りには市庁舎や王の家、ブラバン侯爵の館そしてギルドハウスが立ち並んでいる。ここには有名なチョコレート店Gもある。ワッフル店で食べたら、日本のものより大きくて、お腹いっぱいになった。日本の丸いワッフルはリエージュワッフルといって、食べた四角いワッフルはブリュッセルワッフルというらしい。この大きさはお菓子の枠を超えている。
食欲はなかったが、近くに日本料理店があるということで、グランプラスから5分ほど離れたところに、その店Mがあった。日本風ののれんをくぐると、5席ほどのカウンター席があり、そこに座った。上の階にも席があるようで、おかみさんが甲斐甲斐しく行き来をくりかえしている。
天ぷらうどんを注文した。90ユーロ(1500円程度)は高いと思うが、ベルギーのレストランでは安い方だ。おかみさんがお茶をもってきてくれて、それを一口飲むと、日本の味だった。コーヒーばかり続いていたので、すごくおいしく感じた。
「おいしいですね」
と言うと
「実家の山形から送ってきたんです」
というおかみさんの返事。こちらも東北の出身だと告げると、だんなさんは福島の出身だとあかしてくれた。仙台の料亭で知り合って、ベルギーの日本料理店の手伝いに二人できて、その後結婚して独立したとのこと。仙台の料理店は私も知っている老舗の割烹だった。
おかみさんが山形のつけものをだしてくれた。一口食べると、木村くんが
「おいしいですね。ごはんにあいますね」
と余計なことを言ったので、おかみさんは笑いながらライスをだしてくれた。ごはん茶碗なのがうれしい。すると、天ぷらがあがり注文した天ぷらうどんもでてきた。
どちらを先に食べようかと悩んでいると、おかみさんが
「うどんから食べてくださいね。きっとお口にあうと思いますから」
ということで、うどんを先に食べた。
「うまい!」
私が言う前に、木村くんが大きな声でほめたたえた。
「私もうまいと思います。ヨーロッパで一番おいしい日本料理だと思いますよ」
おかみさんと主人はほほえんでくれていた。
「お米はオーストラリア米だから、日本ほどではないと思いますよ。日本米が手に入ればいいんですけどね。ヨーロッパにはまだ流通していなくて・・」
それでも山形の漬け物をのせて食べたごはんはおいしかった。
満足して店をでると、あたりが薄暗くなっており、グランプラスの夜景が見られるようになった。ライトアップされた市庁舎が浮かびあがっている。プロジェクションマッピングの時間になると、観光客から歓声があがっている。
ホテルにもどったのは、12時になっていた。いい疲れだった。
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