第23話 おじさんとりんごのアクシデント。

 

 つむぎが言った。


 「パパさま。我とりんご姫を夢幻の王国に連れて行け」


 「は?」


 りんごが通訳してくれた。


 「つむぎちゃんは、ぴーちゃんランドに行きたいみたいです」


 ぴーちゃんランドとは、湾岸エリアにある人気のテーマパークだ。ぴーちゃんというヒヨコのマスコットが人気で、なかなか良いお値段がするのだが、連日、大繁盛をしている。


 そんなところに行きたいとは、つむぎも年頃の女の子なんだな。


 りんごは言葉を続けた。


 「……、すごく入場料高いですし、わたしは行かなくて大丈夫です。課題もしたいですし。そういうところは、あまり興味がないというか……」


 健気だなぁ。

 りんごだけ置いていくとか、それこそあり得ない。


 「3人でいこう。留守番はなしで」


 すると、りんごはパァッと向日葵ひまわりのように明るい顔をした。



 当日の朝、パタパタと準備をする。

 つむぎは、何かのアニメなのかな。眼帯をつけて魔術師のようなコスプレをしている。


 ……こいつ、この格好で入場できるのか?


 前に、スタッフと紛らわしかったり、イメージが合わないコスプレをしていると、中に入れてもらえないって聞いたことがあるぞ。


 高い入場料を払って、途中退場とかほんとイヤなんだけど。ということで、つむぎには普通の服になってもらった。


 りんごは珍しく、身体のラインが出る服を着ている。胸元まであけた白いシャツと黒いスカート。首元には虹色の石がついたネックレスをしている。


 いやぁ、やはり可愛いな。

 むしろ、つむぎはお留守番で、りんごと2人で行きたいんですが?


 すると、つむぎと目が合った。

 やばい、気取られたかも。


 つむぎは、片目を隠して言った。


 「パパさま。姫のリボンを引っ張ってパンツを脱がす日は、まだまだ先じゃぞ?」


 こいつ、ほんとに人の心が見えてるのかな。たまに妙に鋭いんだけど。


 そう。先日、ちょっとしたハプニングがあったのだ。


 仕事が深夜まで残業になってしまって、遅いのでそのまま風呂に入ろうとしたところ、脱衣所でりんごと鉢合わせになってしまった。


 運悪く、りんごは全裸で、両腕を上げて髪の毛を拭いていて……。すぐに戸を閉めたのだが、りんごの裸が目に焼きついてしまった。


 透き通るように真っ白な肌。ピンクの乳首と綺麗なお椀型のバスト。流れるような腰のライン。丸くて女性らしいヒップ。全身ツルツルなのに、意外にしっかりしてるアンダーヘア……。


 否が応でも女を意識させられてしまう綺麗で魅力的な身体だった。17か。昔なら結婚できた歳なんだもんな。それはそうか。


 りんごに嫌われるかとヒヤヒヤだったのだが、さくらんぼうのような顔で「忘れてください!」と言われただけで、その後も普通にしてくれている。


 優しい子。 

 俺もへんな目で見ないようにしないと。


 まぁ、こんなおじさんに見られても、異性という感覚がないだけかも知れないけれど。


 俺がそんなことを考えていると、つむぎがジト目で耳打ちしてきた。


 「して、パパさまよ。姫のヌードは格別じゃったろう? もうおなごにしか見えないのではないか? 姫も『もうお嫁に行けない』って言っておったぞ。もちろん、責任をとって、もらってやるんだろうな……? りんご姫が義理の母になるとは、我の運命も数奇じゃな」


 「適当なこというなよ!!」 


 ったく。耳年増にも程がある。悪代官みたいな話し方しやがって。つむぎ、よく時代劇みてるもんな。その影響か。


 その様子をみていたリンゴと目が合った。すると、りんごは頬を赤くして下唇を噛むと、視線を逸らした。


 もしかして、つむぎの話はホントなのか?

 

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