ウルフ、奔走 3
「ロジフォース、現着した」
ロジタイタンがさらに二機と並ぶ。その背丈はメカイグニスより一回りほど高く、横幅もあるため、威圧感はかなりのものだ。
大きな二機に挟まれてウルフ号がまるで子供のように見える。
「まずはアの腕を何とかしないとだね」
「ああ」「うむ」
三機が構えると怪獣が吠え、その刃を振り下ろす。
「行くぞ!」
メカニスレッドの声とともにメカイグニスとウルフ号がそれぞれの推進力によって弾き出されるように加速する。振り下ろされる刃を剣と鎌で挟むように受け止めると、その重みと衝撃で地面にヒビが入る。
「ハァァア!」
メカイグニスが刃に沿って剣を滑らせその根元に向かって切り抜けると、大きな刃が宙を舞った。
片腕を失った怪獣は激昂の声を上げ二機へと突進する。
「タイタン・ナックル!」
射出された拳が怪獣の顔面を捉える。怪獣は数瞬よろめいたが、今度はその怒りの矛先をロジタイタンへと向けた。
そうして怪獣の意識がそれたスキにウルフ号はその懐へ滑り込む。
怪獣がロジタイタンへ向けて刃を振り下ろす瞬間。紫炎を瞬かせ打ち上げ花火のごとく飛び上がり、鎌を怪獣の腕の根元にひっかけるようにして切断する。
「よし! 今だ!」
再びメカニスレッドの号令が飛び、三機が一斉に怪獣へ突撃し組みつく。
「さすがに重いな」
「全然びくともしないね」
助っ人二機をもってしても大型怪獣の巨体は地面から少しも離れない。
「まだまだァ!」
ウルフ号が炎を一際大きく燃え上がらせる。
「あの小さな機体でなんてパワーだ......!?」
「これは僕たちも負けてられないね......限界突破だ!」
「リミッター解除!」
メカイグニスとロジタイタンのジェネレーターがうなりを上げ炎を大きくする。すると怪獣の体が次第に浮かび上がり、だんだんと上方へ加速していく。
十分な高度を稼いだところでメカイグニスとウルフ号が離脱する。
「タイタン・ボンバー!」
再び空に閃光が走り、一度目よりもさらに大きな爆炎が怪獣を打ち上げる。
「イグニスソード!」「ウルフ・サイズ!」
メカニスブレードの刃が真ん中から二つに割れて180度に開くと、一列に並んだ発振器からレーザーが照射され白く輝く巨大な剣を形作り、ウルフ・サイズはそれに負けじと紫の刃を伸長させる。
「イグニス・エンド!」「ウルフ・クレセント!」
二振りの刃が空に白と紫の大きな弧を描く。両腕を失った怪獣はなすすべもなくX字に切断され、その巨体に見合う大爆発を残して消滅した。
__......
「ありがとう、パワーウルフ。キミのおかげで被害を最小限に抑えられた」
「俺たちが来るまでよく持ちこたえてくれた。住民たちも感謝していることだろう」
「コッチこそ礼を言うよ。一人ではどうしようもなかっただろうからな、ほかのメンバーにもよろしく言っといてくれ」
三機が危機を乗り越えたことを称えあう。
「とにかくみんな無事でよかった。何だか最近次元災害が増えているようだし、お互い頑張ろうね!」
「よろしく頼む」
「ああ、よろしく」
そういって別れを告げると二機は飛び去って行った。
「大活躍でしたね、パワーウルフ」
「超ハードな一日だった......。早く帰って寝てェ......」
早速飛び立とうとするがジェネレーターの出力が上がらない。
「あれ?」
「激しい戦闘でジェネレーターが損傷してしまったのでしょうか」
「流石に無理させすぎたか。ってかそもそも実験機だもんな......。仕方ネェ、列車で戻るか」
列車を呼び、展開された貨物エレベーターに立つと機体が地下へと引き込まれる。そして機体が列車の簡易ハンガーに固定されると列車が急加速を始める。
「うおっ、すごいスピードだな。ちょっと目が覚めた」
「一応緊急用車両でダイヤもないですからね」
「へぇ~」
「......眠そうですね」
列車の規則的な振動がパワーウルフの意識を削り取っていく。
「マジで疲れた......。ふぁ~。それにしても最近次元災害が多いな」
「そうですね。こちらでも調査中ですが原因はまだわかっていません。一過性のものならいいんですが」
「......」
「パワーウルフさん?」
「......」
「パワーウルフさん、起きてください。あとちょっとですよ」
「う~ん......。何体、こようと......ウルフハウリング~」
「パワーウルフさん!」
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