〈後編〉ぼくの決断

「大きくなったら結婚しようね」


僕がまだ4歳の時、好きだった女の子と約束した。


だから僕は20歳の誕生日の今日、彼女に会うためにこの街に帰ってきた。


当時のことは今でも鮮明に覚えている。


彼女とは久しく会っていないけれど、僕は今でも彼女のことが好きだ。


彼女だって、あの時のことを今でも覚えているはずだ。


彼女がまだこの街で暮らしていることは知っている。

だが、この街の何処にいるのかまでは分からなかった。


そういえば、彼女とはよく近所のスーパーにあるゲームコーナーへ遊びに行ったっけ。


僕は真っ先に思い出のスーパーへと向かった。


しかし、何時間待っても彼女は現れなかった。


仕事があるので、今日の夜にはこの街を出なければならない。


ここで彼女を待つより、街に出て彼女を探したほうが良いのだろうか・・・


いや、彼女は必ずここへ来る。

ここで彼女が来るのを待つべきだ。


果たしてこの決断は正しいのか、僕は何度も自問自答しながら彼女が現れるのを待ち続けた。

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No.89【ショートショート】約束 鉄生 裕 @yu_tetuki

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