第6話 ソウル4日目(土曜日) 修正版
※この小説は「韓国グルメ旅」の修正版です。実は、パソコンの操作ミスで編集中に保存できなくなり、新しいページで再開した次第です。文言や表現を一部修正しております。もう一度読み直していただければと思います。
トラベル小説
ホテルの食堂での朝食は「ソルロンタン」だった。牛骨スープだ。塩味ですっきりしている。昨日は濃いめの朝食で、今日は薄めの味。連泊の客には助かる心遣いだ。最後にはライスを入れて完食しようと思ったが、
「だめでしょ。残すのがマナーよ。それにしても、ここのホテルの料理はこってるわね。ソルロンタンは結構時間がかかるのよ。2つ星なんでしょ」
「うん、そうなんだけどトリップアドバイザーのコメントを見たら、結構好評なんだよ。ホテルも飲食部門に力を入れているみたいだね。だからモーテルからホテルに移行したんじゃないかな」
食堂から出る時に、スタッフに
「マシッソヨ(おいしかったよ)」
と言うと、そのスタッフは喜んで
「コマスミダ(ありがとう)」
と返してくれた。
9時にチェックアウトをした。2人分2泊計6食で2万円程度。高級ホテルの半額以下でリーズナブルだとは思う。窓から見えるけばけばしい景色を除けばいいホテルだった。タクシーでKTXの駅へ向かい、10時のソウル行きに乗車。昼にソウル駅につき、市庁裏のホテルにチェックインした。地下鉄移動で駅からホテルまでの数100mがやたらと長かった。やはりタクシーにすべきだった。部屋には入れないので、江南(カンナム)のCOEX(コエックス)に行くことにした。市内を1周している地下鉄2号線で30分ほどで行くことができる。ここでも韓流ドラマのロケが盛んに行われている。私は時代物の韓流ドラマしか見ないが、妻は現代ドラマも見ていて、あちこちで
「ここで〇〇と△△が抱き合ったのよ」
とか騒いでいる。そこで映画館に入った。
値段が3万W(3000円ほど)という映画があった。私も知っている有名な男優が主演のアクション映画である。韓国語がわからなくても楽しめそうなので、その映画を見ることにした。
入ってみてびっくり。ふつうならば100席ほどありそうな広さのところに、30席ほどしかない。座るとリクライニングできる。それも180度水平状態まで倒れ、足をのせるオットマンまである。寝ながら映画を見ることができるのだ。それに加えてスタッフがやってきて、ドリンクのオーダーをとっていった。席にあるパンフを見ると、1杯は無料だということだ。驚きの映画館だった。
映画の内容は主役は北の国の将校なのだが、実は南の国のスパイで、最後は北の国に損害を与えて、無事南の国にもどってくるというストーリーだった。ただ、韓国語だったので半分寝てしまった。革張りのリクライニングシートの誘惑に負けてしまった。妻はずっと起きて見ていたらしい。それにしても、この高級映画館。これから普及するのだろうか。シートはよくなってほしいとは思うが、フルリクライニングは眠気をさそうだけではないだろうかと思った。
映画館を出ると、妻がまたまたリクエストをだしてきた。
「ねぇ、冬ソナのロケ地に行きたいの。中央高校なんだけど・・」
と甘い声で誘ってきた。
スマホで調べると、昌徳宮(チャンドックン)近くにある。タクシーを止めて、スマホの画面を見せて連れていってもらった。
昌徳宮の裏手にその高校はあった。校門に続く坂道は私も知るロケ地だ。校門から見る校舎の姿もドラマに出てきた。ここを学生服姿のペ・ヨンジュンとチェ・ジウが歩いたのである。妻は涙を流さんばかりに喜んでいる。学校をバックに写真を撮りたいというので、私はにわかカメラマンになった。
妻がなかなか立ち去ろうとしないので、
「夕飯を食べに行くぞ」
と背を向けて歩きだしたら、やっとついてきた。自分がチェ・ジウになった気分でいたのだろう。不満ありありだった。
東大門(トンデムン)近くの新設洞(シンソルドン)にある肉典食堂(ユッジョンシックダン)に行くと、前回同様行列ができていた。チケットを受け取り、2階の待合室に入った。これまた前回同様1時間ほど待たされ入店。注文はトンモクサルとサムギョプサル、そして焼き飯である。トンモクサルは豚のあご肉である。日本でいうとトントロなのだが、肉の厚みが違う。焼くのはスタッフがやってくれる。厚いので焼けるまで時間がかかる。それまでキムチやナムルを食べながら待つのだが、スタッフの手つきを見ているだけでも楽しい。
以前、日本の養豚飼育農場の社長に
「どうして日本で豚のあご肉が食べられないの?」
と聞くと、
「流通過程で解体業者がもっていってしまうんです」
という返事だった。どこにもっていくのだろうか? と思ったが未だにわからない。どちらにしても希少部位であることには変わらない。
トンモクサルが焼き上がり、はさみで一口大に切り分けられると、いよいよ食べられる。周りはカリッとしているが、中はジューシーだ。肉の厚さのおかげだと思う。それに肉の甘味が感じられる。以前、ソウル在住のTVレポーターが
「焼肉のイメージが変わる味ですよ」
と言っていたが、まさにそのとおりだと思う。日本でもこの味をさがして、焼肉店をいろいろ歩いたが、いまだに見つからない。
そして、締めの焼き飯。肉を焼いた鉄板で残った肉汁を使ってスタッフが作ってくれる。これまた手つきが芸術的だ。妻も機嫌を直して喜んで食べている。これで5000円弱。日本の半額の感覚だ。満足してホテルにもどった。
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