仮面バトラーマリーン 第一話【非公式】

フカ

前半パート



𓆛𓆛𓆛

時は令和。ここは日本国・ヨコハマ。

サクラギ町、ミナトミライでは今日も怪人が出現し、観覧車は止まり放題だ。


現在、2024年から遡ること三年。この国に突如出現した怪人、「魚人うおんちゅ」たちは隊列を組みヨコハマ港から陸に上がる。自らの鱗を輝かせながら、『お嬢様』を捕らえ仲間にする、そして魚人うおんちゅ帝国をここ日本国に建国するのだ、と声高らかに宣言した。


「みんな魚人になるでツボ!!!」

2024年9月28日。ビルの下、頭部を異形に変えた男が叫び続ける。

「痛い!」

内陸部からヨコハマへ初めて来ていた十五歳の少女、嘉島かしまナミネは初めて見る怪人の傍ら、脚がもつれて転んでしまった。

「おや? 観光の方ツボね。間が悪い子!」

鋭い眼光、尖る牙。茶の斑点が埋める皮膚。

怪人の頭部は海のギャング、ウツボの様相を呈している。

「う、うわああごめんなさい!食べないで!」

「食べはしないツボ。君も怪人にならないか」

「お給料出るんですか?」

「…………………」

「だ、だめそう」

「キイイ! 悲しい気分になったツボ!!やっぱり食べるツボ!!!」

「うわああ!」

嘉島ナミネの悲鳴がワールド・ポーターズ前に響き渡った。


「そこまでだ!!!」

ナミネとウツボが振り返る。橋の先、そこにはこれまたナミネと同じぐらいの歳の、少年の姿があった。

彼は青みのかかる黒の瞳でウツボ男を見据える。

腰にはベルトが巻かれていた。

「行くでち!!」少年の肩に乗っかった、手のひらサイズの白イルカがヒレを持ち上げて喋った。

「変身!!!」

少年の背後から荒波のようなものがざばんと上がったかと思うと、白イルカが元の大きさへひととき戻り、少年にかぶさるように体を包み込む。

朝焼けのような美しい光が収まったとき、そこにはエメラルド・グリーンのスーツに包まれた仮面バトラー・マリーンの姿があった。


「き、貴様は仮面バトラーマリーン!!」

ウツボ男がぐらりとたじろぎ、かと思えば瞳を光らせ、ガンメタ色のメリケンサックを拳を合わせて鳴り響かせる。

「ヨコハマの海はエメラルドじゃないツボよ!!」

「知ってる。しかしヨコハマの海をさらにけがしたのは君たちだ。故郷である母なる海をなぜ汚す」

「仕方ないツボ。俺たちは逆らえない。うみキング様がそうしろって言ったツボ」

「そいつは本当に海キングなのか?」

「ええいうるさいツボ!!!行くツボ!!」

「最後にもう一つ。エメラルド・グリーンは人類が恋い焦がれる色だ。仮面バトラーはかくあるべきだ」

仮面バトラー・マリーンが地面を蹴った。

嘉島ナミネを抱えると、桟橋の端から端へと跳躍し、まだ動けないナミネをそっとベンチに下ろす。

「ここで見ているんだ。君の役目、この先を」

「はい?」

「君はお嬢様、かもしれないんだ」

「へ?」

ナミネがぽかんとしているうちに、瞬間、マリーンはウツボ男の前へ跳ぶ。

まばたき一回、それに満たない速度で距離を詰めたマリーンがウツボ男へアッパーを決める。人で言うなら顎下が、拳のかたちに歪みウツボは呻く。

ウツボ男の右腕が微かに動くのを仮面バトラーは見逃さない。流れるように姿勢を低くし空振らせ、彼の天賦、バネのような肉体を真上へと跳ね上げる。

頭突きだ。再び顎の下へと巨大ダメージを喰らったウツボはよろめいた。

「さっさと終わらせるでちよ〜!」

「おう!」

仮面バトラーのベルトが光る。鞭のような武器が出現し、マリーンは地面へ試し斬り様に叩きつけた。

漁師の神器、とあみをカスタマイズしたものである。

マリーンが美しく鞭を振るう。しなり、伸びてゆく鞭が解けて網状に広がる。この道三十年の手練れが投げたと網のような、完璧なアーチを描き網がウツボに絡まった。

広がる網の全ての線から紫電の雷光が駆け巡る。

「うわああああ!!!電磁網とは卑怯ツボ!!!」

「今でち!!!!」

悶え苦しむウツボ男の正中線へ、仮面バトラーマリーンの必殺、バトラーキックが炸裂し、爆風が辺りを駆け巡る。

爆散したウツボ男はヨコハマの海へ還っていく。







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