第4話 4日目 シルトホルン 修正版
※この小説は「スイスを旅して」の修正版です。実は、パソコンの操作ミスで編集中に保存できなくなり、新しいページで再開した次第です。文言や表現を一部修正しております。もう一度読み直していただければと思います。
トラベル小説
今日は雨。昨日の嵐の残り雨かもしれない。今日はグリンデルワルドの隣の谷にあるラウターブルンネンに行くことにした。クルマで30分ほどだ。左右が切り立った崖だ。高さは100mはあるだろうか。古代に氷河が作った谷なのだ。
そこの奥にある駐車場にクルマを停めた。めざすはシルトホルン(2,970m)。ロープウェイを3つ乗り継いでいく。時間は30分ほどかかる。正規料金は1万5000円ほどと結構な金額だが、ハーフチケットで半額。
頂上駅に着くと、雨は止んでいる。というより雨雲の上にきたようだ。雲海が広がっている。本来ならばアルプスの山々が広がっているはずなのだが、ほとんど見えない。ところどころ山らしきものの陰が見える程度だ。外の展望台に出てみると、雲海のすきまに絶壁の崖が見える。100mどころではない深さだ。展望台の先に崖ぎりぎりまで行ける小さな展望台があった。ただ、そこに行くためには幅30cmぐらいしかない雪道を30mほど歩かなければならない。道には手すり用のロープが張られているが、滑り落ちたら10mほど下にあるガードレールにぶつかる。勢い余ってガードレールを乗り越えるかもしれない。そう思うと足がすくむ。私はそうそうに渡ることができたが、妻はびびってなかなか進めない。その方が余計怖いのだが・・・半分泣きそうな顔で渡り切った。
そこから見ると、まさに絶壁の崖の上であった。スリル満点だったが、妻が
「すぐにもどろう」
と、私の手を引っ張った。上の展望台まで手を離さなかった。
レストランの開店時間になったので、一番上の回転展望レストラン「ピッツ・グロリア」へ一番乗りした。1時間かけて1周する回転レストランである。このレストランは映画007の「女王陛下の007」でロケ地となっている。いたるところに007のポスターが貼られている。
メニューを見ると、ドイツ語なのでわけがわからない。個別に注文もできるようだが、写真もないのでビュッフェにすることにした。一人5000円程度。豪華な昼食となった。1時間かけてゆっくり食べる。ハムやチーズだけでなく、ステーキもある。シャンパンもあったが、飲酒運転になってしまうのでアルコールはさけた。妻はしっかり飲んでいた。これで景色がよかったら最高の食事だったと思う。
C国人の団体がどやどや入ってきた。でも、回転席ではなく、中央の団体席に座って皆同じものを食べている。開店展望レストランで回転席に座らないのでは、来た甲斐がないと思う。昔の日本人の団体もこうだったんだろうなと思わされた。
食べ終わってから、館内にあるボンドワールドへ行った。トイレへ行くと、壁に女性の裸身のシルエット像が描かれている。映画007のタイトルバックに出てくるシーンと同じだ。妻がトイレから出てくると
「個室の壁に変な絵が描かれていたよ。私が入ったところは、前衛的なロボットだった」
と笑いながら教えてくれた。個室ごとに絵が違うらしい。さすがに女性の裸身のシルエットはないみたいだ。その後、映画に使われた小道具などが展示されているコーナーへ行った。ヘリコプターやボブスレーには実際に乗ることもできる。007の初期の映画だから、オンタイムで見た人たちは相当の年齢になる。若者には受けない施設になるかもしれないと思いながら下りのロープウェイに乗った。ひとつ降りたところで、スリルウォークのポスターを見つけた。崖沿いに歩く道だ。今日は雲の中なので何も見えない。妻は絶対行かないという顔をしている。温度計を見ると「6℃」の表示。ダウンベストを持ってきて正解だった。
ふもとに降りると雲はかかっているが、雨はやんでいた。一帯は花畑になっており、黄色や青い花が咲き誇っている。ひとつびっくりしたのは、足元に大きなナメクジがいたことである。その大きさ10cm。わたしの靴の先よりも大きい。踏みつけるのも恐ろしい気がした。それと不思議だったのは、滝があるのに滝つぼがないことだ。後で調べると、落差300mもあり、途中で霧状になってしまうことと、麓が岩盤なので水の力で掘れないといことであった。滝の近くに行くと、ミスト状の霧を感じる。暑い時には気持ちのいい場所かもしれない。
夕飯はカップラーメンにした。昼に食べ過ぎたので食欲がなかったし、時間のかかるレストランに入る気になれなかった。安藤百福さんの似顔絵が描かれたカップ麺の味は日本と変わらなかったが、麺の長さは短かった。ヨーロッパの人々の嗜好に合わせているのだろう。
食べ終わって、妻といっしょにテラス席に座って、お酒を飲んだ。カクテルのような味だった。夕暮れのグリンデルワルドとアイガーの景色は最高のつまみだった。
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