第6話 ドキドキ

「テスト疲れたー」

テスト期間が終わった和也は、近くの電気屋に寄ることにした。「珍しく」テスト勉強を頑張ったので自分へのご褒美ということで、新しいゲームソフトを買うことにした。

(最近出たFPSゲームでも買うか)

ウキウキした気分で電気屋に入ると、見た事のある人が歩いていた。

(皐月さん?)

そこには、おそらく同じ思考をしているであろう清宮皐月がいた。

「皐月さん奇遇だね」

そう声をかけると

「っ!?!?」

相当びっくりしたのか声にもならない声を出していた。

「皐月さんもなんかソフト買いに来たの?」

「は、はい...」

「俺も買いに来たんだよね!最近出たFPSゲーム!ずっと楽しみにしてたんだよねー」

「わ、わたしもそのソフト買おうと思ってて...」

「まじ?じゃあこの後一緒にやろうよ!テストも終わったし!!」

「いいですけど...どこでやりますか...?」

「俺ん家遅くまで親帰ってこないからさ!俺ん家でやろうよ!」

「え!?...ま、まあいいですけど...」

「やったー!じゃあ早く買ってやろうぜ!」

「はい...」

そうして二人は共にゲームソフトを買い和也の家に向かった。

和也の家の近くまで来た二人だったが、和也はそこで重要なことに気がついた。

(ちょっと待て?ゲームのことしか頭に無くて忘れてたけど、これ家に二人っきりで遊ぶってことじゃないか!?)

和也はようやく気づいた。

(やべえめっちゃ強引な感じで誘った気がするし変な誤解されてるかもしれねえ)

もちろん和也は何か変なことをしようと誘った訳ではないが、皐月からするとそう思われているかもしれない。

(ま、まあ何もしなければいいだけだもんな)

そんなことを考えながら、二人は和也の家に入った。

「す、すごい...たくさんゲームソフトありますね...」

「まあちっちゃい頃からやってるし、全部とっておいてるから結構な数あるね」

「私は中学の時からゲームやり始めたので...最近のしか持ってないです...」

(中学からやっててあんなに強いのか)

「よし!じゃあ早速やるか!」

そして二人はゲームに没頭した

「皐月さん上手すぎでしょ、やっぱ才能あるんだね」

「そう...ですかね...」

「だってずっと俺より2倍以上敵倒してるし、俺死んでも皐月さん1人でずっと勝ててるよ」

「たまたまです...」

「そんなことないって、マジで上手すぎ尊敬するわ」

「そ、そんなに褒めないでください...」

皐月は顔を赤くしてそっぽを向いた。

(は?何それめっちゃ可愛い)

不意を着いた皐月の行動に思わずドキッとしてしまった。

(俺、もしかして皐月さんのこと好きなのか?)

ふとそんなことを思った。

(でもまだ会って1ヶ月経たないくらいだし、そんな早く好きになってたら女たらしみたいでやだな)

元々皐月さんのことが気になっていたのはゲームをやっていたからで、そこに恋愛感情を一切なかった。

(それに皐月さんきっと俺にあんま興味ないだろうし)

「和也くん...?もうマッチ始まってますよ...?」

「ああ!ごめんごめん!考え事してて!」

「もう結構やりましたし...一回休憩にしませんか...?」

「おっけー!俺お菓子あるから持ってくるわ!ポテチでいい?」

「大丈夫です...ありがとうございます...」

そうして和也はお菓子を持ち皐月さんの方へと向かった、その時

「うお!?」

つまづいて軽く転んでしまった。

そして転んだ先には

「!?!?」

皐月さんがいた。咄嗟の判断で体制を取ろうと両手を出したが、逆にそれが皐月さんを抱きしめるような感じになってしまった。

「ご、ごめん!」

「だ、大丈夫です...怪我しませんでしたか...?」

「俺は大丈夫!皐月さんの方こそ、その、倒れ込んじゃって、大丈夫?」

「私は大丈夫です...」

そうして会話が終わったあと、少しだけ気まずい空気が流れた。

(め、めっちゃ柔らかかった、、、)

(びっくりした...)

倒れ込んだ癖に変な想像をしてしまった和也は、少し罪悪感に駆られた。

休憩タイムに入った二人は少し雑談をすることにした。

「皐月さんって毎回車で学校通ってるけど、家遠いの?」

「そんなに遠いわけでもないんですけど、自転車持ってなくて...歩いて帰ってもいいんですけど疲れちゃうので...迎えに来てもらってます...」

「へぇーいつか皐月さんの家も行ってみたいなあ」

「え?そ、そうですか...?」

「あ!ごめん変な意味とかじゃなくて!そ、その、ゲームとかどんなのあるか見てみたいなーって!」

「な、なるほどですね、、」

そしてまた少し沈黙が続いた。

「さ、皐月さんはさ、目に前髪ほとんどかかってるけどゲームする時やりずらくないの?邪魔じゃない?」

「邪魔ではあるんですけど...家でゲームする時は前髪は上げてるので多少は...学校では顔見られるのが恥ずかしいのでわざと前髪は伸ばしてますね...」

「なんで恥ずかしいの?」

「自分の顔に自信が無いというか...顔をしっかり出すと見られてる感じがして...なんか落ち着かなくて...」

「そうなの?うーん、、ごめんちょっといい?」

「?」

そして和也は皐月さんのおでこに手をあてて、前髪をあげた。

「ひゃっ...!?」

「え?」

前髪を上げると二重が綺麗な少しおっとりとした目と、それにしっかり合わされた眉毛が出てきた。

(や、やばい、タイプすぎる)

そして和也は皐月さんの素顔を見た事と、自分が大胆な事をしていることに気づいてさらに羞恥心が増した。

「ご、ごめん!嫌だったよな、悪かった」

「い、いえ大丈夫です...」

そしてまた少し沈黙が続いた。

「そ、その、皐月さんさ」

「...はい」

「えっと、皐月さん全然その、可愛いと思うから、もっと自信持っていいと思うよ!」

もう自分でも何を言ってるのか分からなくなってきた。

「え!?そ、そうですか...?あ、ありがとうございます...」

「だ、だからさ、俺といる時は前髪上げて欲しいっていうか、ほら!顔みて話したいって言うかさ!」

「な、なるほど...?」

「そうそう!」

「で、でもちょっとあの...」

「どうした?」

「和也くんに見られるのは、ちょっと恥ずかしいっていうか...なんていうか...その...遠慮しときます...」

(なんだそれ可愛いすぎだろ)

危なくハートを完全に撃ち抜かれそうな和也であった。

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