第12話

事件が解決したのはそれから数日後のことだった。


高梨はずっとアリバイを盾にしらを切り続けて横柄な態度でいたのだが、大阪に研究室の分室があることが判明し一気に劣勢になった。


さらに妙子からの情報はヒントにしかならなかったものの、どこでもドアの存在とその仕組みを簡単そうに語ったところ「そんな簡単な仕組みではない!」と秘密裏に進めてきた部分の研究内容を熱く語り出し、ハッとして口をつぐんだが遅かった。

「私にはあの研究が人生の全てだったんだ」


犯行の動機は正に研究そのものだった。

当時タイムマシンの研究に心血を注いでいたのだが、物質での移動が成功した時点で国からストップがかかってしまった。

これによる犯罪や時間を操作することへの危惧。又これが海外に流れればもっと凶悪なことに使用されかねないとの判断で完全に極秘扱いにされ、それを作動するための最も重要な部分に関しては抹消されたのだった。

その重要な部分を知るのは教授と高梨だけであった。

武が関与していたのは大まかな仕組みと発想の部分だったのだ。


諦められなかった高梨は秘密裏に研究を続け、ついに動物の移動に成功した。

しかも物体同士の移動ではなく、AからBに移動することが出来たのだった。

高梨は秘密裏の実験のために多額の借金を背負い立ち行かなくなったため、これを海外に売る手立てをつけた。そのために最終的な設計図を、メインパソコンで製作していたところ教授に見つかり激しく止められたと言う。

そのデータへのアクセスは教授と高梨しか出来ないものだった。

かつての仲間であるため公にはしないからどうかやめてくれと。

この時は潔く引き下がったように見せておいて、周到に計画を練った。


まずは犯行1時間前に大阪で警察に落し物を届けることを思いついた。

しかし拾い主の書類と警官の記憶だけでは危ないので、道頓堀で大勢に目撃され、かつSNSにアップされることを狙った。


その後すぐに大阪にある研究所の分所から東京へ瞬間移動をする。

実際に試すのは初めてのことなので怖さはあったが、それよりも自分の研究成果と多額の借金返済のために決心した。

あらかじめ東京のボックスでセットしておいたので、あとはこのスイッチを押すだけだ。目を瞑って勢いよくそれを押した!


長いような短いような空白の時間の後、目を開けると東京の研究室だった。

足下がふらつきながらも急いでパソコンに向かう。


予想よりも早く教授が来てしまった。

何をしてるのかと聞かれ「この研究を葬る決心がついたのでこのデータ を私の手で消去しに来ました。」と言いながらデータをコピーした。

もちろんこれに気づいた教授はそのデータを返すように迫ったため、あらかじめ用意していた包丁で数カ所を刺した。


教授の声を聞きつけた研究員に遭遇してしまい刺した。

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