ミチとの遭遇
神野さくらんぼ
第1話
バイトの面接に行かなきゃいけないのに、HRが終わるのが遅くなって1人ドタバタしてる友人がいる。
あーバスの時間間に合わないー!!
あーどこでもドア欲しい〜!!
叫ぶ友人に、どこでもドアでどこまで行く?
と尋ねたら
バス停!!
そこはバイト先でよくないか??
と思う私。
無人島に一つだけ持っていくとしたら何?
と同じレベルで討論になる
ドラえもんの道具で欲しいのは何?
私は断然、どこでもドア!
2112年9月3日のドラえもん誕生を待たずして、それがあと一歩のところまで来た!
のかも!しれない…
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7才違いのいとこ武は大学院生として研究に勤しんでいる。
武は、伯父(武の父)が武豊を神様と崇めていて、豊ではなく何故か名字の武を名前にしたというエピソードを持つ。
武は子供の頃から、なんでなんで?と何にでも疑問を持つ子供で両親はその質問に必死に答えていた。
中でも宇宙には並々ならぬ興味を持っていて日本中の宇宙に関係する施設は網羅したのではないか。
1人息子の武に対して両親は愛情と時間とお金を惜しげもなく注いでいた。
私も何度か連れて行ってもらったが、武は一つ一つの説明を納得いくまで読むため全然先に進めず、幼い私は飽きてしまう事が多く次第に行かなくなっていった。
宇宙に関しての知識はそこらの教授と引けを取らない!将来は宇宙飛行士だ!と叔父はよく自慢していた。
本人はというと、それ以外にはなんの興味もなくコミニュケーション能力は高いとは言えない内向的な性格だった。
TVで良くある賢い子供の宇宙特集にもちらりと出演した事もある。
スッキリとした切長の目に少し茶色が強いサラサラの髪型で同級生より頭ひとつ背が高く大人びた外見に、コメンテーターから将来が楽しみ!ともてはやされたが、なにぶん内向的で質問されたことに最低限の返答しかしないためTV出演はその一回きりとなった。
家が近所でご飯をよく一緒に食べていた事もあり(特に金曜日の夕飯はほぼ毎週)私は武のことを兄のように慕っていて、武の方も私のことをミチと呼んで可愛がってくれている。
私の名前は妙子なのだが、武が7歳の時に産まれたての私を見て宇宙人に見えたらしい。
当時毎日繰り返し見ていた未知との遭遇から私を勝手にミチと名付けた。
金曜日の夕飯の時はドラえもんを一緒に見るのも幼い頃からの習慣になっていた。
武は道具の一つ一つに疑問をもち、仕組みを知りたがった。
私の方は単純にドラえもんが欲しいとしか思うことはなく、ドラえもんが叶わないならどこでもドアだけは何とかならないかと武に頼んでいた。
たけちゃんならどこでもドアを作れるはず。と疑わなかったのだ。
食事の後親たちはお酒を飲んで盛り上がるので、ドラえもんを見た後は武の部屋で過ごすことが多かった。
天井や壁にはデカデカと宇宙の写真が貼られ、精度の凄い望遠鏡がかなりのスペースを占めている。
流星群や月食などの天体ショーは必ず一緒に観察したし、普通の夜空もよく観察した。
私が初めて失恋した時もだまって望遠鏡をセッティングしてくれて流星をみたけど、これまでにも結構な回数見ていたので私にとっては貴重な体験ではなく悲しみは流れなかった。
それでも武が流星について、実は毎日1万トンが降り注いでいることや、中国の小説『三国志演義』では、諸葛亮の陣営に赤く大きな流星が3度流れ、これにより諸葛亮は自分の死を察知するという物語があって、流星と人の死を結びつける考えもこの物語から発生したことや、アンデルセンの童話『マッチ売りの少女』では、少女の亡くなった祖母が話した「流れ星は誰かの命が消えようとしている象徴」との言葉が出てきた話などを淡々と話してくれたことで気がつけば悲しみは流れ去っていた。
武の宇宙への興味は冷める事なくその他のあらゆる知識も詰め込んでいき順調に進学して行った。
大学で専攻した物理学に魅せられて研究室に入ってからは忙しいらしく会うことが少なくなっていった。
そんな武からLINEが来た。
ミチ!どこでもドアが出来るかもしれない!
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