剣色の夢(読み切り版)
チャカノリ
第一章 夢
暗い中、耳がこもる。
目を閉じているからこそ、懐かしく響く音がある。川のせせらぎだ。それも、登下校中に通学路から見える、あの神社の裏の川だ。
小学生の頃はそこで独り、ザリガニを取り、カエルを捕まえた。何が起きるか楽しみな、時間を忘れる遊び場だった。が、中学、そして高校になってからはビル街のようなただの風景と化し、何も思わない。ヘドロや腐った藻で、ニオイが少しキツいくらいだ。
ふと瞼を開け、赤土の川岸から流れと目を合わせた。川の中心に赤シャツを着た少年がいるのが分かる。小学三年の自分にそっくりだ。
川の中に大根でも見つけたのか、何かを引き抜こうと足を踏ん張り、何度も手を滑らせてはしぶきを上げている。何があるんだ。
ツルッ。またツルッ。ツルッ。
だがついに、手ごたえがあったのか、目を見開く幼い僕。
その時、白くたくましい水柱がバッと立ち、彼の体を覆い隠した。
バッシャンという音とともに、そんな水の爆発が消えると、少年が浅い川底へ尻もち付いているのが見えた。そして、その小さな両手で引き抜いた何かを、天へ向けている。
手が掲げるそれは、赤白く光る剣だった。
幼い少年は口をぽかんと開け、引き抜いた剣に目を光らせる。それは太陽よりも、どんな星よりもまぶしい。
その様子を、今の自分は木に寄りかかって見ている。
すると後ろからいきなり、冷淡さのこもった女性の声がぶつかってきた。
「それ、あたしのなんだけど」
「えっ!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます