小説を書いて生計をたてる作家と猫の冒険譚
沼津平成
第1話
「ぼく、猫アレルギーなんだよね」
練馬のアパートのその一室に人は二人いた。さっきから漂っていたぼんやりとした空気が一段とぼんやりしてくる。
「へえ……そうなのか」唐突に切り出されると、アケチミズミは苦笑いするしかない。
アケチミズミと友人とは六年来の関係だから、友人の
「猫か……」アケチミズミはもう一回、先ほどの浅江の言葉を反芻した。いや、正確にいえば浅江先輩である。
浅江とアケチは同じ新人賞の受賞者で浅江の方が第六回、アケチが第九回の受賞者だ。
花開くのが、浅江の方がはやかった、というべきかもしれない。二人はおなじ第四回から応募し始めたからだ。
けれど二人はそんなことは言わないと決めている。そっちの方が、いいからだ。
「だから……」
次の言葉に、アケチは驚愕する。
「猫、貰いとってくれないか?」
穏やかな空気が、引き締まったのはほんの一瞬のことでした。
小説を書いて生計をたてる作家と猫の冒険譚 沼津平成 @Numadu-StickmanNovel
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