だれの首?

白鷺(楓賢)

プロローグ

雨は容赦なく降り注いでいた。スコールと呼ぶには激しすぎるその雨の中、僕は道に迷っていた。目的地は遥か先、辿り着ける保証もない。冷たい雨が服に染み込み、肌に貼りつく不快感が増していく中、ふと目の前に現れたのは、朽ちかけた古びた館だった。


誰もいないはずのこの場所に、どうしてこんな館があるのか、そんな疑問が頭をよぎる。しかし、寒さと疲労で思考が鈍り、雨宿りという選択肢以外の考えが浮かばなかった。僕は館へと足を向けた。


館の前に立つと、重厚な木の扉が目に入る。手を伸ばす間もなく、その扉はゆっくりと開いた。まるで僕を招き入れるかのように――。不気味な静けさが館の内部から漏れ出し、背筋に冷たいものが走ったが、僕はそのまま一歩を踏み出した。


一歩、また一歩と足を進めるたび、周囲の暗闇が僕を飲み込んでいく。そして、次の瞬間、足元に感じた異物感に目を向けた僕は、息を飲んだ。


そこには、生首が転がっていたのだ。


驚愕のあまり、すぐには動けなかった。目を凝らして周囲を見回すと、床にも、壁にも、天井にも、生首が――無数の生首が、僕を取り囲んでいた。


この館は、いったい何なのか?そして、これらの首は――誰のものなのか?


恐怖が心臓を締めつける中、僕はその答えを探すため、震えながら館の中へと歩みを進めた。

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