あの日夢見た世界の麓へ

NonD

世界設定「アキシギル第一紀の記録」

世界樹の芽吹き。

それは、世界の始まり。


天高くまで伸びた枝が大気を生み出し、

数多の葉が落ちて大地となり、

深々と張った根が魂を創る。


世界樹の開花。

それは、命の始まり。


花は散り世界を旅し、終着で命となる。

魂のない植物として、魂のない動物として。

心を持たない命が誕生した。


世界樹の結実。

それは、心の始まり。


果実には魂が宿っていた。

大地に落ちた果実は魂のある者となる。

心を持つ命が誕生した。


世界樹が創造した世界を、心を持つ命が歩く。

果実から生まれ落ちた原初の命は、後世では「エント」と呼ばれる。


エントが最初に見た景色は、闇。

アキシギルには一切の光が存在しなかった。

心を持つ命も、持たない命も、ただ彷徨うだけ。


エントは憂いた。

数多の命の姿も、互いの姿も、世界樹の姿すらも見ることが出来ない。

多くの命が苦悩する中、世界樹が1つの光を天へと放つ。


太陽。

光はアキシギルを照らし、エントは初めて世界を見た。

大気と大地が、四方に広がり続ける世界。


東には広大な平原。

北には高くそびえる山脈。

西には果てしない荒野。

南には無限の森林。


太陽の光は、限りあるものだった。

同じ間隔、同じ時間、同じ大きさの光が世界を照らす。

太陽は落ちて、再び闇が訪れる。


闇の訪れを、エントが拒絶した。

世界樹が照らさぬのであれば、エント自ら照らしてしまおう。


月。

太陽の光に代わり、エントがアキシギルを照らす。

同じ間隔、同じ時間、大きさだけは再現できなかった。



一日の始まりに世界樹が太陽で世界を照らし、

一日が終わるとエントが月で世界を照らす。

繰り返される日々は、命の姿にも影響した。


かくして、

世界が始まり、

命が始まり、

心が始まり、

太陽が昇り、

月が昇る。


アキシギル第一紀。

新たなる心を持つ命の誕生までの期間は、第一紀と呼ばれている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る