シナリオがない?なら作ればいいじゃない ー王女も私、ヒロインも私、魔王も私、この世の全ては私でできているー

うゆ

第1話 転生したら無性?

 気がついたら転生していた。

 ……無性の子供として。


 Why?


 まてまて落ち着け、状況を整理しよう。

 まず私の名前は………ん?

 あれ?なんで思い出せないんだ?


 それどころか前世の姿や家族構成、友達などの人間関係が何一つ思い出せない。

 常識や趣味、嗜好などの内面は思い出せるのにそれ以外が思い出せない。


 ま、まぁ思い出せないならそこまで重要じゃないということかな。

 今は過去のことではなく現在を見ることをしよう。nowだよnow。


 まず今世の私は無性です。

 ………なんでだよ!?

 やべ、最初の疑問から進めなくなりそう。

 うん、とりあえず一回おいて、周りを確認するか。


 見た感じ部屋の中は中世ヨーロッパ風、

 よくある異世界の部屋感が見られますね。部屋の中には大勢の人、男一人と女が沢山いるって感じ。

 少数を除けばほとんどがメイドが着ているような服装だね。多分侍女だと推測する。

 それ以外の少数の中に多分私の両親だと思う人がいるのでお教えしよう。


 ……ふむ、ほう。

 美男美女だな。

 父は身長180cmで優男の雰囲気がある。体はガッチリしていて必要な筋肉は足りているように思え、周りよりも豪華な服装をしている。そう、あれだ、王様が着ているような服装をしてる。

 髪は金髪で顔はあれ、乙女ゲームに出てくる王子がそのまま成長した感じ。


 そして、母は柔和な雰囲気を感じる。

 体は出るとこは出て、引くとこは引いている理想系な姿をしてる。

 服装は布一枚だけど、めっちゃ柔らかそうな感じ。多分絹とかだと思う。

 髪は銀髪で顔は美人系だね。

 例えるとしたら、エ◯ゲーに出てくるヒロインのお母さんみたいな感じ。

 ……この例え、よくないかな。

 まぁ心の中で考えてるからバレることはない!

 そして!そんな両親から産まれた私は

 無性を除けばきっと美人or美男になるはず!

 その無性が最悪なんだけどな!


「そ、そんな!どうしてこんなことに!」

「あなた、落ち着いて」

「落ち着いていられるか!我らの子供なら男だろうが女だろうが大事に育てようっと誓っていたのに、産まれたのは男でも女でもないばけ「あなた!」……っ!」

「それは言ってはいけないことですよ」

「………すまなかった」


 ……わーお。気まじぃしこえー。

 仮母が仮父に向かって怒ると部屋の温度が何度か下がった気がした。

 さらに仮母が私のこと抱いてるから怖さ倍増してるよ。


「男でも女でもなくてもこの子は私たちの子です。それを重々承知してください」

「……あぁ、すまなかった。どうかしていたようだ。許してくれ」

「……それを許すのは私ではありません、この子です」

「…そうだな、すまなかった、我が子よ」


 えぇー、そう言われても私的にはあまり気にしてないし、とりあえず笑顔でも送ってやるか。


「にぱー(^^)」

「っ!……すまなかった。そして

 ありがとう」


 おっ、伝わったか。

 よしよし、いいんやでそれぐらい。

 特に被害を被ったわけでもないし、

 私が同じ状況なら私も取り乱していただろうからいいんや。幸せならOKです。

 だが、両親はそれでも良くても周りの侍女達はそうではないみたいです。

 少なくても好意的には見られないね。

 そのことには仮父も気づいたようだ。


「全員、今日あったことはすっぱり忘れるか、生涯他言せず墓の中までに持っていくことを命じる」


 おぉ、かっこいい。

 さっきまでも怒られている姿や誤っている姿とはまるっきりちがう。

 王みたいな堂々とした佇まいを感じる。


「「「「はっ!」」」」


 仮父の言葉を聞いた侍女達が一糸乱れぬ礼をした。

 すげぇ、生で見ていいんですかこんな貴重な光景!


「うむ、してマリアよ、我が子の名前はどうすれば良いかな」

「ふふ、別にいつも通りに喋れば良いではないですか」

「い、いや、皆が見ているのでな」

「いいじゃないですか、ここにいるみんなあなたの素を知っているんですから」

「なっ!何で知ってるんだ!」

「あなた、たまに私の前で素で喋ることがあるじゃない」

「えっ!本当か!」

「えぇ、本当よ」


 ……なんかイチャイチャしだしたんだけど。

 侍女や我が子の前でするか普通。

 侍女達も微笑ましい物を見るような目で見ているから尚更居心地が悪い。


「んっ、おほん。そっ、そんなことより我が子の名前はどうしようかという話だろ」

「あら、そんなことって、軽く見てるんですか」

「い、いやそんな事はないぞ」

「ふふ、わかってませよ、少しからかいすぎましたね」

「う、うむ。わかればいい。してどうする?」

「そうですね。元々考えていたのだと男の子ならルーク、女の子ならルーナという事でしたが、どうしましょうあなた」

「うむ、その事で我に名案がある」

「あら、どんな事?」

「先ほど我が子に謝罪した時、こちらの言葉を理解していたと感じた。ならばどちらの名前が良いか我が子に直接聞けばいいと思う」

「なるほど。良い案だと思います。あなたにしては」

「ちょ、一言余計だよ」

「ふふ、冗談です。では、こうしましょう。ねぇ、私の愛子、もしルークという名前がよければ私の右手に触れて。ルーナがよければ私の左手に触れて」


 おぉう、いつのまにか会話が終わり名前を決めるという重大イベントが起こっているのですが。どうしましょう。

 多分ですけど前世の私は男だった気がします。さっき私の趣味などは覚えていると言ったと思うがその中にTSに関する物があった。そしてそれは男が女の子になる物が多くあったのだ。

 このことから私は女の子に憧れていたんだと思います。

 なら取るべき手はこちらですね。


 そう思い私は左手に触れた。


「あら、うふふ。わかったわ。これからよろしくね、ルーナ」

「よろしく頼む、ルーナ」



 今この瞬間にルーナという男でも女でもない子供が産まれた。

 これからルーナを中心にどんな物語が紡がれていくのかは、まだ誰も知らない。

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