おっさんゲーマー、懐かしのレトロRPGがフルダイヴ型にリメイクされたのでゲーム世界への帰省を思い立つ~『あの夏のリバインド』~
カズサノスケ
第1章 この道。きっと、わが旅
第1話 あのゲームへ帰ろう
「オクラ様、『ブレイヴ・ソウルズ』ワールドへご入場ですね。RPGですと、もちろん転生シークエンスはご利用で!」
「ん? 待て。それは何だ?」
「まるで現世から異世界へ転生したかの様にレトロゲームの主人公に成り切れる当園自慢のオリジナルムービー生成サービスですよ!」
今、俺(
俺の様な、かつてゲーマー少年だった現おっさん(37歳)の間でそこはちょっとした話題の場所だった。
週末、リアルにちょっと趣味のお出かけをするだけでそこそこの金が飛ぶ。だが、『アナザー・ダイヴ・リワールド』ならば定額月1100円で好きなだけ過ごし放題。
確かに少年時代をそこで過ごしたとも呼べる、どこか懐かしい空間をリアルに感じながらノスタルジーに浸る。これはもうヒーリングタイムにしかならない。
「あのゲーム世界へ帰ろう」、いつの間にかまるで帰省する様な感覚での利用を勧めるキャッチがSNS上を躍る様になっていた。俺もそれに誘われたおっさんの1人というわけだ。
VRゴーグルを装着して最初に目の前の現れたのが今やり取りしている妖精、ここの受付係の様だ。最初にアカウント名を決める様に求められたが、特にコレというものもないので『オクラ』、名前が蔵人だから適当にそうしてみた。
そして、RPG『ブレイヴ・ソウルズ』ワールドのプレイを選択したところで転生シークエンスの話が始まったところだった。
「ご利用はとぉっ~~ても簡単、ご希望の死に方を決めて頂くだけでいいんですよ!」
「なっ……。どう死にたいか決めろだと?」
「後はアカウント情報から過去にどんなに酷くて辛い目に遭ったかなどを吸い出しますので。そうして、死ぬ瞬間から脳内で嫌な思い出がフラッシュバックする様子を生成AIがムービーで作成し異世界へ旅立つ期待感を高める!という無料サービスになっております」
この妖精、飛び切りの笑顔で凄まじく恐ろしい事をサラッと言いやがったぞ…。無料を餌に個人情報をゴソッと抜く気満々な上、なんと悪趣味な…。
「わかった。では、転生シークエンスの利用は無しで」
「えぇ!? RPGをやるのに何てもったいない!! 絶対にご利用された方がお得かとぉ~~~~!!」
「いらんっ!」
「わかりました……。それでは転生シークエンスのご利用は無しで進めさせて頂きますね」
くそっ、なんとしつこい。断るまでに随分と時間がかかったぞ。ここが、ヒーリングスポットというのは本当なのだろうな…。
「では、『ブレイブ・ソウルズ』ワールドへ転送致しますね。もちろん、オリジナル版のプレイデータの利用無しで……。ん? いや、これは何と珍しい、データ有りですかぁ!!」
妖精の驚き方が半端なかった。一瞬、背中の羽の羽ばたきが止まって落下しかけるほどだ。
「そうなのか? プレイデータを持っていたら特典が付くから、VRヘッドギアにセットしろと何かのネット記事に書いてあったからそうしただけだが」
「はい、確かに『ブレイヴ・ソウルズ』は当園初のその様な仕様になっておりますが私が知る限り初めてのご利用です。何せ25年も前のゲームですからお持ちの方はいらっしゃらないと思いましたが…」
あぁ、そう言えばあれから25年にもなるか。今37歳の俺が『ブレイヴ・ソウルズ』をやってたのは確かに12歳、小学6年生の頃だったな。あのゲームに夏休みを丸ごと吸われたっけ。
「で、どんな特典がもらえるんだ?」
「それはワールドインしてからのお楽しみでございますよ! プレイ進度に合わせて豪華な特典が付くのですが、オクラ様はクリア済みな上にレベルカンスト、アイテム等もコンプリートの様ですから最上級なのは間違いありません」
「クリアか……。まあ、したと言えばしたな」
それにしても、そんなにやり込んでたのか12歳の俺は。メモリカードの中身なんて最後にプレイした25年前からずっとチェックなんかしてないからさすがに忘れてたな。
しかし、そこまでハマったRPGだったからこそ、あそこへ帰ってみたいなんて思ったわけだし。
「そうだ。25年前のオリジナル版では登場しなかったモンスターが出るとか、クエストがあるとか。新規追加の要素がかなりあると小耳に挟んだがそれは本当か?」
「はいっ! オリジナル版をプレイされた方も新鮮な気分で楽しめる追加コンテンツが盛りだくさんでございます」
見間違えたか?平静を装っていたが、一瞬また落下しかけた様な。
「そっ、それではオクラ様。『ブレイヴ・ソウルズ』ワールドへ行ってらっしゃいませ~~!!」
これ以上何かを質問されない様に半ば追い出される様に急いで転送された様な気もするが?どうだろう?まあ、そんなのはどうでもいい。
こうして俺は、25年振りにあの『ブレイズ・ソウルズ』へ帰れるのだから。
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