短編集 ピース

ファンラックス

ピース

今は春。

ある一家が花見をしている。

大人笑い合っている。子供達ははしゃぎまわっている。

その中で、一人の男性の近くにいる女性が何か小さな物を抱えていた。

赤ちゃんだ…男性が笑うと赤ちゃんは泣き、女性が笑うと赤ちゃんは笑った。

二人は楽しく互いに笑い合っていた。

みんなでした写真撮影は、の新たな家族が主役となり、皆嬉しそうにピースをしていた。


今は夏。

ある少年が、三人の友達を連れて虫取りをしている。木に張り付いているセミを虫を必死に取っていたが、その中の一匹を取り逃してしまう。

セミにオシッコをかけられてビショビショだ。

それでも、少年達は楽しいと笑い合っていた。

日もくれる頃に、男の子の友達の一人が写真を撮ろうと言い出した。

三人は汗と水とおしっこに塗れながらも、清々しい笑顔をでピースをしていた。


今は秋。

男の子は大きくなり、女の子を連れてデートをしている。

ぎこちなく話す彼らに、恋のキューピットは何かをささやいている。


男の子は女の子に告白した。

女の子は涙を流し、首を縦に振る。男の子も涙を流し、女の子にハグをした。

二人は抱き合いながら愛を語り合った。

記念に二人はこの《桜の木》》の下で写真を撮った。

二人は幸せそうに笑いながらピースをした。




今は冬。

戦争が始まった。焼け野原となった街並みでは、人々が倒れている。

熱線に体を焼かれた人々は、もう動くことができないのだ。


男は最後の力を振り絞り、立っていた。自分の妻を守るように抱えながら…


「水を…く…れ」

彼は必死に川を目指た。川のそばに行くと彼は妻の亡骸を置き、もう2本しか残っていない指で水をすくい、妻の口に入れるのを繰り返した後

倒れ込むようにして……力尽きた。


力尽きる直前に、彼は願った。

どうか…妻とまた巡り会えるように。

どうか…平和な世になるように。

自らの指を天にいる神に突き出すようにして、願った。



今は春。

戦争が終わってから何十年の時が経った。平和になった世の中で、今日も人々は笑い合い、喧嘩をしながらも今を生きている。

そんな中、二人の男の子と女の子が、桜の木の下にやって来た。

後ろから遅れるように二人のお母さんとお父さん達がやってくる。


あぁ…平和な世に生まれた二人はまた、恋をし、喧嘩をしながらも幸せに生きていくだろう。平和を願う君達のは、これからもずっと…人々の心の中に……


笑顔に写真を撮る二人とその家族を見て、私はそう思うしかなかった。


ーーーーー

戦争というのは簡単には終わりません。しかし、我々は戦争という恐ろしいことを後世に伝えていかなければなりません。




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