眠りの拳士 リー・メイリャン編7 戦い、その後


「星のチカラ? 一体何を言ってるアル! あ! この巨大ロボを呼んだのはさてはパーパね!」



「呼んだのは君だ、メイリャン。その白銀の機体はクレイジー・ムーン。月のコアで生成され、月のチカラを宿す君の奥義に反応し、月からこの地球にやってきたんだ。」



「ほえ? ワタシが呼んだアルか?! それに……クレイジー・ムーン……なんだか懐かしい響きアルな」



「というか黒いの! 寝てる状態のワタシに勝ったアルか?!」



「勝った……と言えば聞こえはいいが、私は終始押されていた。クレイジー・ムーンが出てこなければ勝負はわからなかった」



「それでも寝てる時のワタシに勝たヨ! もっと胸を張るヨロシ!」

 バンバンバン!と鋼鉄の背中を叩くメイリャン。戦い疲れている鋼鉄はよろめく。


「う、うむ……しかしだな……」


「キラーん! その謙虚な姿勢、さてはアンタ、ニポンジンあるな?!」

 突然メイリャンの目が猫目になり招き猫のポーズを取る。


「その通りだ。よくわかったな」


「ニポンジン、お金いっぱい持ってる聞いたヨ! うちの店でたらふく食っていくがヨロシ!」




                 ◆



 中華料理 メイファン 店内


「たっだいまー! アルヨ! さーて腕によりをかけてワタシの絶品天津飯を~って、誰アルか?! そこに座ってるのは?!」

 誰もいないはずの店内に誰か座っている。ピコピコしたネコ耳の正体は……


「ふむ! ワシは天津飯をもらおうかのう!」

 ふんぞり返って扇子をピシャリと鋼鉄たちに向ける。どうにかして神らしい様相を取り繕う、『のじゃロリ』が一人、勝手に席に座っていた。



「ウィディア神……」

 は~とため息をつきながら顔を右手で覆う鋼鉄。またか……という感じを前面に押し出している。



「今日は黒いのとレインちゃんの貸し切りネ! わかったらさっさとどいて~……はっ?! なんねこのオーラは?! この子只者じゃないアル!」

 神が出す気を感じ取ったのだろうか、メイリャンは慌ててバックステップで距離を取る。



「ゴクリ……あんたまさか、神さまアルか?」



「ほ~ほっほ♪ よくぞ気付いたのう! 良かろう! ワシこそが宇宙3女神の長女にして、時と空間の女神、ウィディアじゃっ!! よ~く覚えておくのじゃぞ!」

 くるりんと回りながらポーズを取る。かわいい仕草を完全に心得ている。



「ワシを神と一発で見破るとは、おぬし、眼が良いの! この間なんて、会うなり急に切りつけられたからのう!!」



「そんな奴がいたアルか?! ま~たそいつは命知らずの大馬鹿ネ!」



「まったくそうじゃろう! ほ~ほっほ!!」

 話に花が咲きお互いいい気分になる二人。ウィディアは扇子を偉そうに仰いでいる。



「ちょっと待ってるネ! ワタシの絶品天津飯、作ってやるアル!」


「ワタシの天津飯は豪華に卵を三つ使うネ!」

 そう言いながら卵を中華鍋に手際よく割っていく。あっという間に卵が煎り付けられ、形作られたご飯の上に乗せる。さらにその上に甘い餡がかけられていく。リー・メイリャンの絶品天津飯の完成だ。


「お待たせアルよ!」

 コトっ……とウィディアの前にそれが置かれる。湯気が出ていてとても美味しそうな甘い匂いがする。


「どれどれ……はむっ! はふはふっ! はふぅ~ん~これこれ! フワフワ卵にしっかり味の付いた甘い餡がご飯と絡んで言う事なしの一品じゃっ!」

 レンゲで一口、また一口すくい自分の口へと運んでいく。手が止まらないうまさだ。




「して、おぬしが月のチカラの継承者、リー・メイリャンじゃな?」

 天津飯を食べながらメイリャンに質問するウィディア。その顔つきは真剣だ。空気が変わったメイファンの店内は、静けさが広まっていくのだった。



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